宣伝失礼しました。本編に移ります。
Google広告を運用する上で、「コンバージョン(CV)」の計測は、広告の成果を判断するための生命線と言えます。しかし、単にコンバージョンの「件数」を追いかけるだけでは、広告運用がビジネスの利益成長にどれだけ貢献しているかを正確に把握することはできません。そこで極めて重要になるのが、「コンバージョン値(コンバージョンバリュー)」という概念です。
コンバージョン値は、一つひとつのコンバージョンが持つ「金銭的な価値」を可視化し、広告の費用対効果(ROAS)を正確に測定するための指標です。例えば、同じ「1件のコンバージョン」でも、1,000円の商品の購入と100,000円の商品の購入では、ビジネスへの貢献度は全く異なります。コンバージョン値は、この「価値の違い」を明確に区別し、より収益性の高い広告運用を実現するための羅針盤となります。
近年、Google広告の自動入札機能は目覚ましい進化を遂げていますが、その精度を最大限に引き出すためにも、コンバージョン値の設定は不可欠です。特に「コンバージョン値の最大化」や「目標広告費用対効果(目標ROAS)」といった入札戦略は、このコンバージョン値を基盤として機能します。
本記事では、Google広告におけるコンバージョン値の基本的な概念から、ビジネスモデルに応じた具体的な設定方法、自動入札での活用法、さらには計測精度を向上させるための高度な機能(拡張コンバージョン、コンバージョン値のルール)に至るまで、網羅的に解説していきます。この記事を最後までお読みいただくことで、コンバージョン値の本質を理解し、貴社の広告運用を「件数を追う」段階から「利益を最大化する」段階へと引き上げるための、具体的な知識とアクションプランを習得できるはずです。
Google広告におけるコンバージョン値の基礎知識
まずはじめに、コンバージョン値の基本的な概念と、その重要性について深く理解していきましょう。「コンバージョン数」という指標と何が違うのか、なぜ今このコンバージョン値を設定することが広告運用において必須とされているのかを明確に解説します。
コンバージョン値の定義とは?
Google広告におけるコンバージョン値とは、ユーザーがコンバージョンに至った際に、そのアクションがビジネスにもたらした「金銭的な価値」を示す指標です。この値は、広告主が任意で設定することができます。例えば、ECサイトであれば商品の販売価格を、サービス業であればリード(見込み客)から得られる将来的な平均収益などをコンバージョン値として設定します。
この値を設定することで、Google広告の管理画面上で、キャンペーンや広告グループ、キーワード単位で、どれだけの「売上」や「価値」を生み出しているのかを直接的に確認できるようになります。これにより、広告運用者は、どの広告要素がビジネスの収益に大きく貢献しているかを一目で把握し、データに基づいた的確な意思決定を下すことが可能となるのです。
コンバージョン「数」とコンバージョン「値」の決定的な違い
広告運用において混同されがちなのが、「コンバージョン数」と「コンバージョン値」です。この二つの指標の違いを正確に理解することが、質の高い広告運用への第一歩となります。
コンバージョン数(Conversions)
コンバージョン数は、ユーザーがコンバージョンアクションを完了した「回数」を計測する指標です。「商品が何個売れたか」「問い合わせが何件あったか」といった、アクションのボリュームを把握するために用いられます。しかし、この指標だけでは、それぞれのコンバージョンが持つ価値の大きさを区別することはできません。
コンバージョン値(Conversion Value)
一方、コンバージョン値は、そのコンバージョンがもたらした「価値の総額」を計測する指標です。例えば、1日にA商品(1,000円)が5個、B商品(10,000円)が2個売れた場合を考えてみましょう。
- コンバージョン数で見た場合: 合計で「7件」のコンバージョンとなります。これだけ見ると、A商品の方が多く売れているように見えます。
- コンバージョン値で見た場合: A商品のコンバージョン値は 1,000円 × 5個 = 5,000円、B商品のコンバージョン値は 10,000円 × 2個 = 20,000円となり、合計のコンバージョン値は「25,000円」となります。この視点で見ると、ビジネスの売上に大きく貢献しているのは、販売数は少ないものの単価の高いB商品であることが明確になります。
このように、コンバージョン数は「量」を、コンバージョン値は「質・価値」を測る指標であり、両方を正しく計測・分析することで、広告運用の成果をより立体的かつ正確に評価できるようになるのです。
なぜ今、コンバージョン値の計測が重要なのか?
現代のデジタル広告運用において、コンバージョン値の計測が重要視される理由は多岐にわたりますが、特に大きな理由は以下の3点に集約されます。
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ROAS(広告費用対効果)経営へのシフト:
かつての広告運用では、CPA(顧客獲得単価)をいかに低く抑えるかが重視される傾向にありました。しかし、CPAが低いからといって、それが必ずしもビジネスの利益に繋がるとは限りません。例えば、CPAが500円で1,000円の利益が生まれるコンバージョンと、CPAが3,000円で50,000円の利益が生まれるコンバージョンでは、後者の方が圧倒的に収益性が高いと言えます。コンバージョン値を設定することで、投下した広告費に対してどれだけの価値(売上)が返ってきたかを示す「ROAS(Return On Ad Spend:広告費用対効果)」を正確に算出できます。これにより、CPAの呪縛から解放され、真にビジネスの成長に貢献する広告運用、すなわち「ROAS経営」へとシフトすることが可能になります。 -
自動入札の精度を最大化するため:
Google広告の「スマート自動入札」は、膨大なデータを基にAIが最適な入札単価を自動で調整してくれる強力な機能です。特に「コンバージョン値の最大化」や「目標ROAS」といった入札戦略は、設定されたコンバージョン値を基盤として動作します。つまり、コンバージョン値を設定していなければ、これらの価値ベースの入札戦略を活用すること自体ができません。逆に言えば、正確なコンバージョン値を設定することで、GoogleのAIに対して「私たちのビジネスにとって価値の高いユーザーは誰か」という明確なシグナルを送ることができ、自動入札の学習精度と最適化効果を飛躍的に高めることができるのです。 -
顧客の価値の多様化への対応:
ビジネスが多様化する中で、すべての顧客が同じ価値を持つわけではありません。新規顧客とリピート顧客、高額商品を購入する顧客と低額商品を購入する顧客、特定の地域に住む顧客など、その背景によってビジネスへの貢献度は異なります。コンバージョン値を用いることで、こうした顧客ごとの価値の違いをデータとして捉え、より価値の高い顧客層へ広告予算を重点的に投下するといった、戦略的なアプローチが可能になります。
これらの理由から、コンバージョン値の設定は、もはや単なるオプションではなく、データドリブンな広告運用を行い、競合との差別化を図る上で必須の取り組みとなっているのです。
コンバージョン値を設定する3つのメリットと注意点
コンバージョン値の設定が重要であることはご理解いただけたかと思います。ここでは、さらに具体的に、コンバージョン値を設定することで得られる3つの主要なメリットと、導入する上での注意点について解説します。
メリット1:正確な広告費用対効果(ROAS)の可視化
最大のメリットは、前述の通り、広告の費用対効果を「ROAS(Return On Ad Spend)」という極めて明確な指標で測定できるようになることです。
ROASは以下の計算式で算出されます。
ROAS (%) = (コンバージョン値の合計 ÷ 広告費用) × 100
例えば、あるキャンペーンに10万円の広告費を投下し、それによって合計50万円のコンバージョン値(売上)が得られた場合、ROASは (50万円 ÷ 10万円) × 100 = 500% となります。これは、「広告費1円あたり5円の売上を生み出した」ことを意味します。
このROASをキャンペーン、広告グループ、キーワード、さらには個別の広告に至るまで、あらゆる階層で把握できるため、以下のような具体的なアクションに繋がります。
- ROASが高いキーワードの入札を強化し、表示機会を増やす。
- ROASが著しく低い(採算が合わない)キーワードを停止または改善する。
- 複数のキャンペーン間で、ROASの高いキャンペーンへ予算を再配分する。
このように、感覚や推測ではなく、実際の売上に基づいたデータドリブンな予算配分と最適化が可能になることが、コンバージョン値を設定する最大の利点です。
メリット2:「価値」に基づいた自動入札戦略の活用
コンバージョン値を設定することで、Google広告のスマート自動入札の中でも特に強力な「価値ベースの入札戦略」を利用できるようになります。具体的には以下の2つです。
- コンバージョン値の最大化:設定された予算内で、コンバージョン値が最大になるようにGoogleのAIが自動で入札単価を調整します。売上全体の最大化を目指す場合に非常に有効です。
- 目標広告費用対効果(目標ROAS):広告主が設定した目標ROAS(例:500%)を達成することを目指し、AIが入札単価を調整します。採算ラインが明確なビジネスにおいて、利益を確保しながら広告を運用したい場合に最適です。
これらの戦略は、単にコンバージョンを獲得しやすいユーザーを探すだけでなく、「購入金額が高い傾向にある」「リピート購入しやすい」といった、よりビジネス価値の高いユーザーを予測し、そのユーザーに対して入札を強化します。これにより、手動での入札管理では到底実現不可能な、高度なレベルでの最適化が実現します。
メリット3:利益に繋がる広告運用へのシフト
コンバージョン値の導入は、広告運用チームやマーケティング部門のKPI(重要業績評価指標)そのものを変革させる力を持っています。CPAやクリック数といった中間指標から、ROASや総コンバージョン値といった、よりビジネスの最終目標である「利益」に近い指標へと意識をシフトさせることができます。
これにより、広告クリエイティブの制作においても、「クリックされやすい訴求」から「高単価商品が売れる訴求」や「優良顧客に響く訴求」へと、その方向性がより戦略的になります。ランディングページの改善においても同様で、コンバージョン率を高めるだけでなく、平均購入単価を高めるための施策なども視野に入ってきます。
このように、コンバージョン値は単なる計測指標にとどまらず、広告運用に関わるすべての活動を「利益の最大化」という一つの目標に向かわせるための共通言語として機能するのです。
設定・運用における注意点
多くのメリットがある一方で、コンバージョン値の設定と運用にはいくつかの注意点も存在します。これらを事前に理解しておくことが、スムーズな導入と活用に繋がります。
- 正確な価値設定の難しさ:ECサイトのように販売価格が明確な場合は設定が容易ですが、リード獲得型のビジネスの場合、「1件の問い合わせ」が将来的にどれだけの利益を生むかを正確に算出するのは簡単ではありません。LTV(顧客生涯価値)などを基にした論理的な計算が必要となり、ここでの設定値が不正確だと、その後のROAS評価や自動入札の判断もすべてずれてしまいます。
- 自動入札の学習期間が必要:価値ベースの自動入札戦略を導入した場合、AIがデータ収集と学習を行うために一定の期間(通常2週間〜1ヶ月程度)が必要です。この期間中は、パフォーマンスが不安定になる可能性があります。学習が完了するまでは、大きな設定変更を避け、辛抱強く見守る姿勢が求められます。
- 十分なコンバージョンデータ量:自動入札、特に目標ROASを効果的に機能させるためには、ある程度のコンバージョンデータ量が必要です。Googleは公式に「過去30日間に50件以上(検索キャンペーンの場合)」のコンバージョンを推奨しています。データが少なすぎるアカウントで導入すると、AIが適切な学習を行えず、かえって成果が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
【実践】コンバージョン値の基本的な設定方法
ここからは、実際にGoogle広告の管理画面でコンバージョン値を設定する手順について解説します。設定方法は、ビジネスモデルや計測したいコンバージョンの種類によって、大きく2つのパターンに分かれます。
設定前の準備:コンバージョントラッキングの完了
コンバージョン値を設定する大前提として、ウェブサイトでのコンバージョントラッキングが正しく設定されている必要があります。まだ設定が完了していない場合は、まずGoogle広告のコンバージョンアクションを作成し、ウェブサイトにコンバージョントラッキングタグ(GoogleタグまたはGoogleタグマネージャー経由)を設置してください。このトラッキング設定が完了していることを前提に、次のステップに進みます。
設定パターン1:すべてのコンバージョンに同じ値を設定する(静的な値)
これは、すべてのコンバージョンに同じ固定の価値を割り当てる、最もシンプルな設定方法です。1件あたりの価値が均一、または平均的な価値を把握できているビジネスモデルに適しています。
どのような場合に有効か?
- リード獲得ビジネス:「お問い合わせ」「資料請求」「ホワイトペーパーダウンロード」など、その時点では直接的な売上が発生しないが、1件あたりの平均的な価値を算出できる場合。(例:1件の問い合わせから平均して5,000円の利益が生まれる)
- 単一価格のサービス:提供している商品やサービスの価格がすべて同じ場合。
- コンバージョンの重み付け:複数のコンバージョンアクションがある場合に、その重要度に応じて価値に差をつけたい場合。(例:「購入」は10,000円、「カート追加」は500円と設定)
具体的な設定手順
- Google広告の管理画面にログインします。
- 画面右上の「ツールと設定」(スパナのアイコン)をクリックし、「測定」の項目から「コンバージョン」を選択します。
- 価値を設定したい既存のコンバージョンアクションの名前をクリックするか、新しくコンバージョンアクションを作成します。
- 設定画面の中から「価値」のセクションを見つけます。
- 「すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる」のオプションを選択します。
- 表示された入力欄に、1コンバージョンあたりの価値を日本円で入力します。(例:5000)
- 「保存」をクリックし、最後に「完了」をクリックします。
以上の手順で、指定したコンバージョンアクションが発生するたびに、設定した固定値(この例では5,000円)がコンバージョン値として記録されるようになります。
設定パターン2:コンバージョンごとに異なる値を設定する(動的な値)
これは、トランザクション(取引)ごとに、実際の購入金額などを動的に取得し、コンバージョン値として記録する方法です。扱う商品の価格が多岐にわたるビジネスモデルでは、この設定が必須となります。
どのような場合に有効か?
- ECサイト:購入される商品や数量によって、注文ごとの合計金額が変動する場合。
- 予約サイト:予約するプランや人数、日程によって料金が異なる場合。
この設定を行うことで、実際の売上に基づいた、極めて正確なROASの計測が可能になります。
具体的な設定手順
動的な値の設定は、静的な値と比べて技術的な対応が必要になります。ウェブサイトのコードを編集し、コンバージョン完了ページ(サンクスページなど)で、購入金額の情報をGoogle広告のタグに受け渡す仕組みを構築する必要があります。
- 上記「静的な値」の手順1〜4と同様に、対象のコンバージョンアクションの設定画面を開きます。
- 「価値」のセクションで、「コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる」のオプションを選択します。
- 「デフォルトの価値」の入力欄が表示されます。ここには、何らかの理由で動的な値が取得できなかった場合に記録される、代替の値を入力します。(例:ECサイトの平均注文額などを入力しておくと良いでしょう)
- 「保存」をクリックし、「完了」をクリックします。
- 次に、ウェブサイト側での設定が必要です。コンバージョントラッキングタグに、トランザクション固有の値を渡すためのコードスニペットを追加します。このコードは、ウェブサイトの構築方法(直接HTMLを編集するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使用するか)によって異なります。GTMを使用する方法が一般的であり、柔軟性も高いため、詳細な手順は次章で解説します。
この設定により、ユーザーが購入を完了した際、その注文の合計金額が動的にコンバージョン値としてGoogle広告に送信され、記録されるようになります。
【ビジネスモデル別】コンバージョン値の具体的な計算と設定例
理論や設定方法を理解したところで、次に実際のビジネスシーンでどのようにコンバージョン値を算出し、設定していくのかを、主要な2つのビジネスモデルを例に挙げて具体的に解説します。特に、ECサイトにおける技術的な実装と、リード獲得ビジネスにおける論理的な価値算出は、成功の鍵を握る重要なポイントです。
ECサイト編:購入金額を動的に計測する方法
商品価格が多岐にわたるECサイトにとって、動的なコンバージョン値の設定は、正確なROASを計測するための絶対条件です。ここでは、多くの企業で利用されているGoogleタグマネージャー(GTM)を用いて、購入金額を動的に計測・設定する、より実践的な手順を解説します。
仕組みの全体像:データレイヤーの活用
動的な値をGTMで扱うためには、「データレイヤー(dataLayer)」という仕組みを理解する必要があります。データレイヤーとは、ウェブサイトとGTMとの間で情報をやり取りするための一時的なデータ保管場所のようなものです。ECサイトの場合、以下のような流れで実装します。
- ウェブサイト側の対応:ユーザーが購入を完了し、サンクスページが表示されたタイミングで、その注文の「合計金額」や「注文ID」といった情報を、データレイヤーに送信(push)するようにウェブサイトのプログラムを改修します。
- GTM側の対応:GTM側で、データレイヤーに送信された「合計金額」の情報を読み取るための「変数」を設定します。
- GTMでのタグ設定:Google広告のコンバージョントラッキングタグ内で、コンバージョン値の項目に、先ほど設定した「変数」を指定します。
これにより、サンクスページが表示されるたびに、GTMがデータレイヤーから最新の注文金額を取得し、それをコンバージョン値としてGoogle広告に送信する、という自動化の仕組みが完成します。
Googleタグマネージャー(GTM)を使った実装手順(詳細版)
ここでは、具体的な実装ステップを順を追って解説します。ウェブ開発者との連携が必要になる部分も含まれます。
ステップ1:ウェブサイト側の実装(開発者向け)
まず、コンバージョン完了ページ(サンクスページ)のHTMLソースコードに、データレイヤーへ情報を送信するためのJavaScriptコードを設置します。``タグの直前などに以下のコードを追加するよう、開発者に依頼してください。
<コード例>
<script>
window.dataLayer = window.dataLayer || [];
window.dataLayer.push({
'event': 'purchase',
'transaction_id': '(ここに注文IDを動的に出力)',
'value': (ここに注文合計金額を動的に出力。数値型で、引用符なし),
'currency': 'JPY'
});
</script>
上記のコードの`(ここに〜)`の部分を、サーバーサイドのプログラムで、実際の注文IDと合計金額に置き換える必要があります。例えば、合計金額が15,000円の場合、`'value': 15000,` のように出力されるようにします。
ステップ2:GTMでの「データレイヤー変数」の作成
次に、GTM側でデータレイヤーから `value` の値を受け取るための変数を作成します。
- GTMのワークスペースで、左側のメニューから「変数」をクリックします。
- 「ユーザー定義変数」のセクションで「新規」をクリックします。
- 「変数の設定」をクリックし、変数のタイプとして「データレイヤーの変数」を選択します。
- 「データレイヤーの変数名」の欄に、先ほどウェブサイト側で設定したキー名である `value` を正確に入力します。
- 変数に分かりやすい名前(例:DLV - transaction_value)を付けて保存します。
ステップ3:GTMでのトリガーの設定
次に、このタグがいつ発火するか(実行されるか)を指定するトリガーを設定します。
- 左側のメニューから「トリガー」をクリックし、「新規」をクリックします。
- 「トリガーの設定」をクリックし、トリガーのタイプとして「カスタムイベント」を選択します。
- 「イベント名」の欄に、データレイヤーで指定したイベント名 `purchase` を正確に入力します。
- トリガーに分かりやすい名前(例:CE - Purchase)を付けて保存します。
ステップ4:GTMでのGoogle広告コンバージョンタグの設定
最後に、Google広告のコンバージョンタグに、作成した変数とトリガーを紐付けます。
- 左側のメニューから「タグ」をクリックし、「新規」をクリックします。
- 「タグの設定」をクリックし、タグタイプとして「Google広告のコンバージョントラッキング」を選択します。
- Google広告から取得した「コンバージョンID」と「コンバージョンラベル」を入力します。
- 「コンバージョン値」の入力欄に、カーソルを合わせると右側に表示されるレゴブロックのようなアイコンをクリックし、ステップ2で作成した変数(例:{{DLV - transaction_value}})を選択します。
- 「通貨」が「JPY」になっていることを確認します。
- 「トリガー」のセクションで、ステップ3で作成したトリガー(例:CE - Purchase)を選択します。
- タグに分かりやすい名前(例:Google Ads - Conversion Tracking - Purchase)を付けて保存し、最後にGTMのワークスペースを「公開」します。
以上の設定で、ECサイトにおける動的なコンバージョン値の計測が実現します。GTMのプレビューモードを使って、サンクスページでタグが正しく発火し、意図した通りの注文金額が取得できているかを必ずテストしてください。
リード獲得ビジネス(BtoB/サービス業)編:LTVから価値を算出する方法
問い合わせや資料請求といったリード獲得を目的とするビジネスでは、その時点での売上が存在しないため、コンバージョン値の設定はより戦略的な思考が求められます。ここでは、そのリードが将来的にどれだけの利益をもたらすかを予測する「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」を基に、論理的なコンバージョン値を算出する方法を解説します。
なぜLTV(顧客生涯価値)が重要なのか
リード獲得ビジネスにおいて、すべてのリードが同じ価値を持つわけではありません。すぐに契約に至る質の高いリードもあれば、情報収集段階のまま終わってしまうリードもあります。LTVを用いることで、長期的な視点から顧客一人ひとりがビジネスにもたらす平均的な総利益を算出し、それを基にリード1件あたりの価値を逆算することができます。これにより、短期的なCPA(リード獲得単価)に惑わされることなく、長期的に見て収益性の高いリードを獲得するための広告投資判断が可能になります。
LTVを基にしたコンバージョン値の計算式
コンバージョン値の算出方法はビジネスモデルによって様々ですが、代表的な計算式をいくつかご紹介します。
計算式1:基本的な算出方法
これは、リードが最終的に顧客になった場合の平均的な価値(LTV)に、リードから顧客になるまでの成約率(CVR)を掛け合わせるシンプルな方法です。
コンバージョン値 = 平均顧客単価 × 平均成約率
- 平均顧客単価:1契約あたりの平均的な売上または利益。
- 平均成約率(CVR):リード(問い合わせ)から契約に至る確率。
例:平均顧客単価が500,000円で、問い合わせからの成約率が10%の場合
コンバージョン値 = 500,000円 × 10% = 50,000円
この場合、「1件の問い合わせ」のコンバージョン値を「50,000円」として設定します。
計算式2:より精緻な算出方法(商談化プロセスを考慮)
BtoBビジネスなど、リード獲得後に営業プロセスが複数段階に分かれている場合は、各プロセスの転換率を考慮すると、より精度が高まります。
コンバージョン値 = 平均顧客LTV × 商談化率 × 受注率
- 平均顧客LTV:1顧客が取引期間全体でもたらす総利益。
- 商談化率:獲得したリードのうち、具体的な商談に進む割合。
- 受注率:商談化したもののうち、最終的に契約に至る割合。
例:1顧客あたりのLTVが3,000,000円、リードからの商談化率が40%、商談からの受注率が25%の場合
コンバージョン値 = 3,000,000円 × 40% × 25% = 300,000円
この場合、「1件のリード獲得」のコンバージョン値を「300,000円」として設定します。
複数のコンバージョンポイントがある場合の価値の重み付け
ウェブサイト内に、「本契約の問い合わせ」と「簡易的な資料請求」のように、複数のコンバージョンポイント(マイクロコンバージョン)が存在する場合も多いでしょう。この場合、最終的なゴールに近いアクションほど高い価値を設定(重み付け)することが重要です。これにより、自動入札がより重要なコンバージョンを優先して最適化を行ってくれるようになります。
各コンバージョンポイントからの最終成約率をデータで把握している場合は、それに基づいて価値を算出します。
例:
- 「個別相談の申し込み」からの成約率:20%
- 「サービス資料請求」からの成約率:5%
- 「メルマガ登録」からの成約率:1%
この場合、成約率の比率は「個別相談:資料請求:メルマガ = 20 : 5 : 1」となります。
もし「個別相談の申し込み」の価値を基準となる100,000円と設定した場合、それぞれのコンバージョン値は以下のようになります。
- 個別相談の申し込み:100,000円
- サービス資料請求:25,000円 (100,000円 × (5/20))
- メルマガ登録:5,000円 (100,000円 × (1/20))
このように、データに基づいて各コンバージョンアクションに異なる静的な値を設定することで、ビジネスの成果構造をより正確にGoogle広告に伝えることが可能になります。
コンバージョン値を最大化する自動入札戦略の活用法
コンバージョン値を正しく設定したら、次はその価値を最大限に活用するフェーズに移ります。Google広告のスマート自動入札、特に「価値ベースの入札戦略」を用いることで、手動では不可能なレベルでの最適化を実現できます。ここでは、代表的な2つの戦略「コンバージョン値の最大化」と「目標広告費用対効果(目標ROAS)」の仕組み、そして効果的な活用方法について解説します。
自動入札戦略におけるコンバージョン値の役割
価値ベースの自動入札戦略において、設定されたコンバージョン値は、AIにとっての「北極星」のような役割を果たします。AIは、過去のコンバージョンデータやユーザーの属性、デバイス、地域、検索語句といった膨大なシグナルをリアルタイムで解析し、「このユーザーはコンバージョンする可能性が高いか?」という予測に加えて、「もしコンバージョンした場合、その価値は高そうか、低そうか?」という価値の予測まで行います。
そして、コンバージョン値が高くなる可能性が高いと判断されたユーザーのオークションに対しては、自動的に入札単価を引き上げ、逆に価値が低いと判断されれば入札を抑制します。この一連の動作により、広告予算がより収益性の高いユーザーに優先的に割り当てられ、結果として広告キャンペーン全体の収益性が向上するのです。
戦略1:「コンバージョン値の最大化」
「コンバージョン値の最大化」は、その名の通り、指定したキャンペーンの1日の予算をすべて使い切る中で、コンバージョン値(売上や収益)の合計が最大になるように入札単価を自動調整する戦略です。
仕組みとメリット・デメリット
- メリット:設定が非常にシンプルで、予算を指定するだけでGoogleのAIが最も効率的にコンバージョン値を獲得する方法を見つけ出してくれます。特に、キャンペーンの立ち上げ初期や、どれくらいのROASを目指すべきか不明確な場合に、まずは市場のポテンシャルを探る目的で利用するのに適しています。売上全体のパイを最大化したい場合に強力な選択肢となります。
- デメリット:この戦略はあくまで「値の最大化」を目指すため、ROAS(費用対効果)のコントロールは直接的に行えません。場合によっては、ROASが想定よりも低くなったり、CPAが高騰したりする可能性があります。予算をすべて消化しようとするため、少ない予算で運用している場合は機会損失が生まれることも考えられます。
効果的な活用シーンと注意点
ECサイトでセール期間中に売上を最大化したい場合や、新しいキャンペーンでどれだけの売上ポテンシャルがあるかを把握したい場合に有効です。ただし、前述の通りROASがコントロールできないため、運用中は「コンバージョン値/費用」の指標を常に監視し、採算が悪化しすぎていないかを確認する必要があります。もしROASが重要なKPIであるならば、次の「目標ROAS」への移行を検討すべきです。
戦略2:「目標広告費用対効果(目標ROAS)」
「目標広告費用対効果(目標ROAS)」は、広告主が設定したROASの目標値を達成できるように、AIが入札単価を自動で調整する、より高度な入札戦略です。広告費1円あたり、何円の売上を達成したいかを具体的に指定します。
仕組みとメリット・デメリット
- メリット:広告の採算性を維持・管理しながら、コンバージョン値の獲得を目指せる点が最大のメリットです。ビジネスの利益構造から逆算した「目標とすべきROAS」が明確な場合には、非常に強力な武器となります。例えば、「ROASが400%以上であれば利益が出る」というビジネスの場合、目標ROASを400%に設定することで、赤字のリスクを抑えながら広告を自動でスケールさせることが可能です。
- デメリット:目標ROASの設定値が現実的でない場合、パフォーマンスが著しく低下するリスクがあります。例えば、過去の実績ROASが300%のキャンペーンで、いきなり目標ROASを800%のような非常に高い値に設定すると、AIはその目標を達成できるオークションがほとんどないと判断し、入札を極端に抑制してしまいます。その結果、広告の表示回数が激減し、コンバージョンも獲得できなくなる、という事態に陥ります。
効果的な活用シーンと目標ROASの設定方法
安定的にコンバージョンが発生しており、過去30日程度のデータから平均的なROASを把握できているキャンペーンでの利用が推奨されます。目標ROASを設定する際は、まず過去30日間の実績ROASを確認し、それと同等か、少し低い値からスタートするのが安全です。例えば、実績ROASが550%であれば、最初の目標値は500%〜550%程度に設定し、安定して目標を達成できるようになったら、少しずつ(例:50%ずつ)目標値を引き上げていくのが良いでしょう。
どちらの戦略を選ぶべきか?判断基準を解説
「コンバージョン値の最大化」と「目標ROAS」、どちらの戦略を選ぶべきか迷う場面も多いかと思います。以下に判断基準をまとめます。
「コンバージョン値の最大化」が適しているケース:
- キャンペーンの立ち上げ初期で、データがまだ十分に蓄積されていない。
- まずは市場の売上ポテンシャルを最大限探りたい。
- ROASよりも、売上総額の最大化が優先される。
- 目標とすべきROASがまだ明確になっていない。
「目標ROAS」が適しているケース:
- キャンペーンの運用が安定し、過去30日間で十分なコンバージョンデータ(推奨50件以上)がある。
- ビジネスの採算ラインとなるROASが明確になっている。
- 利益を確保しながら、安定的に広告運用を継続・拡大したい。
基本的な流れとしては、まず「コンバージョン値の最大化」でスタートして十分なデータを蓄積し、その実績ROASを基にして「目標ROAS」へと移行していくのが、最もスムーズで効果的な活用法と言えるでしょう。
【改善施策】レポート機能を用いた分析と最適化のアクション
コンバージョン値を設定し、自動入札を導入したら、それで終わりではありません。むしろ、そこからがデータに基づいた改善サイクルのスタートです。Google広告のレポート機能を活用し、得られたデータをどのように分析し、具体的な改善アクションに繋げていくのか、そのプロセスを解説します。
確認すべき主要な指標
コンバージョン値ベースでの分析を行う際に、必ず確認すべき主要な指標は以下の通りです。これらの指標を管理画面の表示項目に追加しておきましょう。
- コンバージョン値:文字通り、期間内に獲得したコンバージョン価値の合計額です。キャンペーン全体の売上貢献度を把握します。
- コンバージョン値/費用(ROAS):投下した広告費に対して、何倍のコンバージョン値が返ってきたかを示す、最も重要な費用対効果の指標です。この数値が高いほど、収益性が高いと言えます。
- コンバージョン値/コンバージョン:1コンバージョンあたりの平均価値を示します。いわゆる「平均顧客単価(AOV)」に近い指標で、どのようなキーワードや広告が高単価のコンバージョンに繋がりやすいかを分析する際に役立ちます。
- すべてのコンバージョン値:ウェブサイト上のコンバージョンだけでなく、電話コンバージョンや来店コンバージョンなど、アカウントに含まれるすべてのコンバージョンアクションの価値を合算した値です。ビジネスモデルに応じて参照します。
レポート画面での確認方法と分析の切り口
これらの指標は、キャンペーン、広告グループ、キーワード、広告、オーディエンス、地域、デバイスなど、様々な階層で確認することができます。分析を行う際は、まずキャンペーン一覧画面で全体の数値を把握し、そこからドリルダウンしていくのが効率的です。
分析の切り口の例:
- キーワード分析:キーワードレポートを開き、「コンバージョン値/費用」で並べ替えます。ROASが非常に高いキーワードは、ビジネスへの貢献度が極めて高い「お宝キーワード」です。逆算して、ROASが採算ラインを大幅に下回っているキーワードは、予算を浪費している原因となっている可能性があります。
- 地域分析:地域レポートで、都道府県や市区町村別のROASを確認します。特定の地域からのコンバージョン価値が特に高い、あるいは低いといった傾向が見つかることがあります。
- デバイス分析:デバイスレポートで、パソコン、スマートフォン、タブレットごとのROASを比較します。例えば、スマートフォンではコンバージョン数は多いが単価が低く、パソコンでは数は少ないが高単価のコンバージョンが多い、といった傾向を発見できるかもしれません。
ケーススタディ:ROASが低い広告の具体的な改善手順
実際に分析を行う中で、「特定の広告グループのROASが目標を大きく下回っている」という課題が見つかったとします。その場合の改善プロセスを、具体的な手順に沿って見ていきましょう。
ステップ1:問題点の詳細な特定
まず、その広告グループ内のキーワードレポートを精査します。ROASが低い原因は、広告グループ全体の問題なのか、それとも一部の特定のキーワードが全体の足を引っ張っているのかを切り分けます。多くの場合、少数の高コスト・低ROASのキーワードが原因となっています。
ステップ2:原因の仮説立案
問題のキーワードが見つかったら、なぜそのキーワードのROASが低いのか、仮説を立てます。
- 仮説A(検索意図のズレ):そのキーワードで検索するユーザーが求めている情報と、広告の訴求内容やランディングページの内容がずれているのではないか?
- 仮説B(競合環境の激化):競合の入札が激しく、クリック単価が高騰しすぎていて採算が合わないのではないか?
- 仮説C(商品・価格のミスマッチ):広告で訴求している商品が、そのキーワードで探しているユーザーの予算感やニーズと合っていないのではないか?
ステップ3:改善アクションの実行
立てた仮説に基づいて、具体的な改善アクションを実行します。
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仮説Aへの対策:
- そのキーワード専用の、より検索意図に合致した広告文を作成する。
- ランディングページを、そのキーワードで検索するユーザーが求める情報が最初に目に入るように改修する。
- 場合によっては、そのキーワードを別の、より適切な広告グループに移動する。
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仮説Bへの対策:
- そのキーワードのマッチタイプを部分一致からフレーズ一致や完全一致に変更し、無駄な表示を減らす。
- それでも採算が合わない場合は、そのキーワードの入札を停止することも検討する。
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仮説Cへの対策:
- 広告文で価格帯を明記し、ミスマッチなクリックを事前に防ぐ。
- そのキーワードの検索ユーザーに、より適した別の商品を訴求する広告を作成する。
このように、コンバージョン値のレポートを起点として、「分析→仮説→実行→検証」のサイクルを回し続けることが、広告の収益性を継続的に高めていく上で不可欠です。
【高度な設定】計測精度を飛躍させる2つの重要機能
基本的な設定と活用法に加え、Google広告にはコンバージョン値の計測精度と活用レベルをさらに引き上げるための高度な機能が用意されています。ここでは、特に重要な「拡張コンバージョン」と「コンバージョン値のルール」の2つの機能について、その仕組みから設定、戦略的な活用法までを詳しく解説します。
機能1:拡張コンバージョン(Enhanced Conversions)
拡張コンバージョンは、プライバシー保護の潮流(特にサードパーティCookieの規制)に対応しつつ、コンバージョンの計測精度を維持・向上させるための重要な機能です。
拡張コンバージョンとは?
通常、コンバージョンの計測はブラウザのCookie情報を利用して、広告クリックとコンバージョンを結びつけます。しかし、Cookieが利用できない環境では、この紐付けができずにコンバージョンが計測漏れとなるケースがありました。拡張コンバージョンは、この計測漏れを補完するための仕組みです。
ユーザーがウェブサイトのフォーム(購入フォームや問い合わせフォームなど)に入力したメールアドレス、電話番号、氏名、住所といったファーストパーティデータを活用します。これらの個人情報は、ウェブサイト側で「ハッシュ化」という不可逆な暗号化処理を施した上でGoogleに送信されます。Google側では、ユーザーがログインしているGoogleアカウントの情報(こちらもハッシュ化済み)と照合し、一致した場合に、それをコンバージョンとして認識します。これにより、Cookieが利用できない状況でも、広告クリックとコンバージョンを高い精度で結びつけることが可能になります。
導入するメリット
- コンバージョン計測の補完:Cookieの制限によって失われていたコンバージョンを補完し、より正確なコンバージョン数とコンバージョン値をレポートできるようになります。
- 自動入札の最適化:より多くのコンバージョンデータがAIの学習に利用されるため、「コンバージョン値の最大化」や「目標ROAS」といった自動入札戦略のパフォーマンスが向上します。
- プライバシーへの配慮:データはハッシュ化されて送信されるため、プライバシーに配慮した形で計測精度を高めることができます。
GTMを使った設定手順
拡張コンバージョンの設定も、GTMを利用するのが一般的です。
- Google広告での設定:まず、Google広告の管理画面で「ツールと設定」>「コンバージョン」を開き、左側メニューの「設定」から「拡張コンバージョン」を有効にします。利用規約に同意し、設定方法として「Googleタグマネージャー」を選択します。
- GTMでの変数設定:ウェブサイトのフォームに入力されたメールアドレス等の情報を取得するため、GTMで「ユーザー提供データ」変数を作成します。変数のタイプとして「ユーザー提供データ」を選択し、「手動設定」で、フォームの各フィールドに対応するCSSセレクタやデータレイヤー変数を指定します。
- GTMタグの変更:既存のGoogle広告コンバージョントラッキングタグの設定を開き、「ユーザーから提供されたデータを含める」にチェックを入れ、先ほど作成した「ユーザー提供データ」変数を選択します。
- 公開と確認:GTMを公開後、Google広告のコンバージョンアクションのステータス画面で、拡張コンバージョンが正常に記録されているかを確認します。(データの反映には時間がかかる場合があります)
この機能は、今後の広告運用において標準的な設定となる可能性が非常に高いため、未導入の場合は早めの対応を推奨します。
機能2:コンバージョン値のルール(Value Rules)
コンバージョン値のルールは、コンバージョン値を一律で設定するのではなく、特定の条件に応じて動的に調整し、より精緻なビジネス価値をGoogle広告に反映させるための機能です。元記事で解説されていた中心的なトピックであり、ここではその内容をさらに深化させて解説します。
コンバージョン値のルールとは?
コンバージョン値のルールは、ユーザーの「地域」「デバイス」「オーディエンス」といった条件に応じて、コンバージョン値を自動的に調整(乗算または追加)する機能です。これにより、ビジネスの実態に合わせて、コンバージョンの価値をより柔軟かつ正確に表現できます。
例えば、「東京のユーザーからのコンバージョンは、他の地域よりもLTVが高い」というデータがある場合に、「地域が東京なら、コンバージョン値を1.2倍にする」といったルールを設定できます。このルールを設定すると、東京のユーザーから10,000円のコンバージョンが発生した場合、レポート上のコンバージョン値は12,000円として記録され、自動入札もこの12,000円という値を基に最適化を行います。
コンバージョン値のルールが適用されるユーザー属性は以下の通りです。
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このルールは、価値ベースのスマート自動入札(コンバージョン値の最大化、目標ROAS)を利用している検索、ショッピング、ディスプレイキャンペーンに適用されます。各ルールには、メインの条件(地域、オーディエンス、デバイスのいずれか一つ)と、任意でサブの条件を指定できます。
コンバージョン値のルールの仕組み
コンバージョン値のルールを使用すると、ウェブサイト側で設定したベースとなるコンバージョン値(静的または動的な値)に対して、Google広告側でリアルタイムに価値の調整が行われます。この調整後の値が、レポートの「コンバージョン値」列に反映され、スマート自動入札の最適化にも即座に利用されます。
これにより、広告運用者はウェブサイトのコードを頻繁に改修することなく、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールや顧客関係管理(CRM)システムから得られた知見(例:「リピート顧客のLTVは新規顧客の3倍である」)を、迅速に広告の最適化ロジックに反映させることが可能になります。
例:オンラインでセールスリードを集めるビジネスで、Google 広告で獲得するリード 1 人あたりの価値を、現在は一律 50,000 円で計算しているとします。一方で、CRMのデータから、実際には神奈川県のリードは平均 100,000 円の価値を持つことがわかっています。この場合、コンバージョン値のルールで神奈川県のユーザーの価値を「2倍に乗算」するルールを設定します。これにより、神奈川県のユーザーからリードを獲得した場合、レポート上の価値は自動的に 100,000 円として記録され、価値ベースのスマート自動入札戦略も、この調整後の価値をベースに、神奈川県のユーザーへの入札をより強化するよう最適化されます。指定したルールによって、自社のビジネスに対する深い理解が、より正確に Google 広告に反映される仕組みです。
コンバージョン値のルールの設定方法
設定はGoogle広告の管理画面から行います。
- Google 広告アカウントにログインします。
- 画面右上のツールアイコン(ツールと設定)をクリックします。「測定」セクションの下にある「コンバージョン」を選択します。
- 左側のパネルメニューから「価値のルール」をクリックします。
- 「コンバージョン値のルールを作成」の青いボタンをクリックします。
- クロスアカウント コンバージョン トラッキングを使用している場合、コンバージョン値のルールの設定は、最上位のクライアント センター(MCC)アカウントから行う必要があります。
- まず「メインの条件」を定義します。「オーディエンス」、「デバイス」、「地域」のいずれかを選択し、対応するサブカテゴリ(例:「地域」なら具体的な都道府県や市区町村)を指定します。
- 次に、任意で「サブの条件」を設定できます。メインの条件に使用しなかった残りの条件から選択可能です。サブの条件を指定した場合、メインの条件とサブの条件の「両方」を満たすユーザーのみがルールの適用対象となります。(例:メイン条件「地域が東京都」かつ、サブ条件「デバイスがモバイル」のユーザー)
- 最後に、「価値の調整」方法を定義します。「追加」または「乗算」を選択し、具体的な数値を入力します。「乗算」の方が一般的に使われやすく、柔軟な調整が可能です。(例:「乗算」を選択し、「2」と入力すると価値が2倍になる)
- 「保存」をクリックして設定を完了します。
コンバージョン値のルールの注意点と優先順位
ルールを設定する際には、いくつかの仕様や注意点を理解しておく必要があります。
注意点1:メインの条件は1種類のみ
一つのGoogle広告アカウント内で作成するコンバージョン値のルールは、すべて同じメインの条件を使用する必要があります。例えば、最初にメインの条件を「地域」で設定した場合、2つ目以降に作成するルールも、メインの条件は「地域」でなければなりません。「オーディエンス」をメインの条件にしたルールを追加したい場合は、既存の「地域」ベースのルールをすべて削除してから、新しく作成し直す必要があります。そのため、どの条件を軸に価値を調整したいかを、事前に戦略的に決めておくことが重要です。
注意点2:メイン条件とサブ条件は異なるものを設定
メインの条件とサブの条件には、必ず異なるカテゴリを設定する必要があります。例えば、メインの条件に「地域」を選択した場合、サブの条件に再度「地域」を設定することはできません。「デバイス」または「オーディエンス」のいずれかを選択する必要があります。
注意点3:一人のユーザーが複数ルールに合致した場合の適用ロジック
ユーザーが、設定された複数のルールの条件を満たす場合、どのルールが適用されるかは条件のタイプによって異なります。この優先順位を理解しておくことは、意図した通りの価値調整を行うために不可欠です。
地域条件の優先順位
地域条件のルールが複数設定されている場合、より限定的な(狭い)地域のルールが優先的に適用されます。
例えば、以下の2つのルールが存在したとします。
- ルールA:北海道のユーザーは、価値を1.5倍にする。
- ルールB:北海道札幌市のユーザーは、価値を2.0倍にする。
この場合、北海道札幌市に在住のユーザーには、より限定的なルールBが適用され、コンバージョン値は2.0倍に調整されます。札幌市以外の北海道のユーザーには、ルールAが適用され、1.5倍に調整されます。
オーディエンス条件の優先順位
コンバージョンしたユーザーが、条件として指定された複数のオーディエンスリストに含まれている場合、以下のリストの優先順位に従って、一つのルールのみが適用されます。リストの番号が若いほど優先度が高くなります。
- カスタマーマッチ
- リマーケティングおよび類似ユーザー(Google広告タグ、Googleアナリティクス、YouTube、アプリユーザーを含む)
- アフィニティカテゴリおよび購買意向の高いオーディエンス
- 詳しいユーザー属性
例えば、「リマーケティングリストのユーザーは価値を2倍にする」というルールと、「購買意向の高いオーディエンス(自動車カテゴリ)のユーザーは価値を1.5倍にする」というルールの両方に合致するユーザーがいた場合、優先順位が高い「リマーケティング」のルールが適用され、価値は2倍に調整されます。
また、同じオーディエンスリストに対して調整方法が異なるルール(「追加」と「乗算」)が存在した場合は、「乗算」のルールが優先されます。
なお、デバイスカテゴリは「パソコン」「モバイル」「タブレット」と重複することがないため、優先順位の概念はありません。
まとめ:コンバージョン値は利益を最大化する広告運用の核
本記事では、Google広告におけるコンバージョン値の重要性から、ビジネスモデル別の具体的な設定方法、自動入札での活用、さらには拡張機能を用いた精度向上まで、包括的に解説いたしました。
コンバージョン値の設定は、もはや単なるテクニックではなく、広告運用を「コスト」から「投資」へと転換させ、ビジネスの利益成長に直結させるための戦略的な基盤です。その要点を以下にまとめます。
- コンバージョン値は「価値」を測る指標:単なる件数ではなく、各コンバージョンが持つ金銭的な価値を可視化し、正確なROAS(広告費用対効果)の計測を可能にします。
- 設定方法は2パターン:リード獲得など価値が均一な場合は「静的な値」を、ECサイトなど取引ごとに価値が変動する場合は「動的な値」を設定します。特に動的な値の設定には、GTMとデータレイヤーの活用が効果的です。
- 価値ベースの自動入札を最大限活用:「コンバージョン値の最大化」や「目標ROAS」といった自動入札戦略は、設定されたコンバージョン値を基に動作します。正確な値を設定することが、AIの最適化精度を高める鍵となります。
- 分析と改善を繰り返す:「コンバージョン値/費用(ROAS)」の指標を軸に、キャンペーンやキーワードのパフォーマンスを分析し、利益貢献度の高い要素に予算を集中させる改善サイクルを回し続けます。
- 高度な機能で精度を向上:Cookieレス時代に対応する「拡張コンバージョン」で計測漏れを防ぎ、「コンバージョン値のルール」でビジネスの実態に合わせた、より精緻な価値の調整を行います。
コンバージョン値の導入と活用には、技術的な設定や戦略的な価値算出など、乗り越えるべきハードルも存在します。しかし、それらを乗り越えた先には、データに基づいた意思決定によって広告の収益性を飛躍的に高める、次世代の広告運用が待っています。
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