宣伝失礼しました。本編に移ります。
日本発の巨大マーケットプレイスが、ついに世界へ同一UXで乗り出しました。メルカリは2025年9月30日、越境取引事業の新戦略を発表し、海外購入者向けの世界共通「メルカリ グローバルアプリ」を提供開始しました。第1弾は台湾・香港、2026年春には米国展開を予定し、3年以内に50以上、長期的には100以上の国・地域への拡大を掲げます。アプリは日本の「メルカリ」および「メルカリShops」の在庫に海外から直接アクセスできる構造で、AIによるリアルタイム翻訳、多通貨・現地決済、エンドツーエンドの配送追跡を標準化。2026年1月以降は出荷前の「全品検品」、さらに2026年上期にはパートナー連携による「あんしん鑑定」も予定され、海外購入の不安を制度として取り除く仕様です。加えて、決済はStripe、国際配送は佐川急便などと連携し、台湾ではコンビニ受取、米国向けには関税込み配送を導入する構えです。これまで代理購入やWeb版の段階展開で蓄積してきた越境実績と、40億品を超える国内在庫を武器に、メルカリは「日本の欲しい」を世界の「今すぐ」に置き換える本格的なフェーズに入りました。
何が「新しい」のか──発表の全体像と時系列
メルカリは2019年に越境取引を開始し、2024年の台湾、2025年の香港でWeb版を展開。今回のグローバルアプリは、その“段階的実装”をアプリUXに統合するもので、「海外の購入者が日本のメルカリの在庫に直接アクセスする」ことを前提に、翻訳・決済・配送・保証までを一気通貫で再設計しています。特筆すべきは、海外からの“出品”ではなく、まずは“購入”体験の磨き込みに集中している点です。これは「需要の厚い日本コンテンツを確実に届ける」という供給サイドの優位性を最大化する順序設計とも言えます。
2019 越境取引を開始(代理購入経由の販売) 2024.08 台湾でWeb版「メルカリ」を提供 2025.05 香港でWeb版「メルカリ」を提供 2025.09 グローバルアプリ提供開始(台湾・香港) 2026 春 米国で提供予定(段階展開) 3年以内 50以上の国・地域へ展開 長期 100以上の国・地域へ拡大
グローバルアプリの「正体」──海外から日本の在庫へ直結する設計
グローバルアプリは海外在住者が日本の「メルカリ」「メルカリShops」に掲載された商品をそのまま検索・閲覧・購入できる世界共通のクライアントです。生活言語のまま自然検索できるAIリアルタイム翻訳、クレジットカードからローカルウォレットまで跨ぐ多通貨・現地決済、購入後の配送追跡までをアプリ一つに集約。国内在庫の厚みを武器にした“発見性の高いUI”をグローバルに展開することで、海外ユーザーの「偶然の出会い」を最大化します。2026年1月からの全品検品は、品質不安を制度的に解消する施策であり、加えて2026年上期のあんしん鑑定の導入により、高額品や真贋リスクの高いカテゴリーでも安心を担保します。現時点では海外からの“出品”には対応せず、まず「買いやすさの世界標準化」を最速で実現する方向に舵を切っています。
機能 | 概要 | 導入時期 |
---|---|---|
AIリアルタイム翻訳 | 日本語の商品情報を自動翻訳し海外ユーザーの探索負荷を低減 | 提供開始時 |
多通貨・現地決済 | Stripe連携により主要通貨と現地決済手段をカバー | 段階導入(本格化は2026年初頭) |
全品検品 | 出荷前に国内拠点で全商品をチェックし品質を保証 | 2026年1月以降 |
あんしん鑑定 | パートナーによる鑑定で高額・希少品の信頼性を担保 | 2026年上半期 |
配送追跡の一元化 | 決済から配送追跡までをアプリで完結 | 提供開始時 |
展開の順番と速度──台湾・香港から米国、そして50カ国・100カ国へ
初期提供は台湾・香港。文化的に日本コンテンツのファンダムが厚く、購買の実需が見込め、物流・決済のチューニングもしやすい市場です。2026年春の米国展開は、ボリュームと商流の複雑性を併せ持つ市場での「仕上げ」に近い位置づけで、ここを突破口に3年で50以上、長期で100以上の国・地域へスケールさせる計画です。順序設計は“勝てる土俵から確実に勝ち筋を作る”典型であり、ファンダム依存の高いエンタメ・ホビー領域の越境購買を先導に、対象カテゴリを段階的に広げていく構図が見て取れます。
現在 台湾・香港(アプリ開始) 2026 春 米国(市場難度は高いが効果も大) 3年以内 50+ の国・地域へ展開 長期 100+ の国・地域へ拡大 指標 「在庫の厚み × 現地決済 × 物流到達率」の最適化速度
決済と物流の舞台裏──Stripeと佐川、現地受取、関税込み配送までを含む「越境オペレーティング・システム」
決済はStripeと連携。多通貨や現地ウォレット対応、安定稼働、AI不正検知(Radar)といったレイヤーを一括で取り込み、コンバージョンを落とさずに国ごとの差異を吸収します。物流は佐川急便などと連携し、同梱発送で送料を抑え、地域ごとの配送方式を最適化。台湾ではコンビニ受取に対応するなど、最後の一歩を現地の生活導線に合わせて詰めています。米国向けには関税込み配送の導入で、購入前の総支払額が明瞭になるよう“着地コスト”の不安を低減。これらをアプリの体験フローに縫い込み、検品や鑑定を含めた「買ってから届くまで」を可視化したのが、今回の設計の肝です。
[海外ユーザーの発見] → [AI翻訳で理解] → [現地決済(Stripe)] ↓ ↓ [購入確定] → [国内倉庫で全品検品] → [国際配送(佐川等)] ↓ ↓ [あんしん鑑定(対象品)] → [現地受取(例:台湾はコンビニ受取)] ↓ [到着・評価](米国向けは関税込み方式で着地コスト明確化)
事業者向け「グローバルEC基盤」の真価──“いつものメルカリShops”で越境へ
新戦略の第二の柱が、国内事業者のための「グローバルEC基盤」です。越境ECの立ち上げでボトルネックになりがちな国際決済、通関・配送、現地言語の顧客対応をメルカリ側の機能として抱え、事業者は「いつものメルカリShopsの操作」で海外販売へと接続可能にします。国や地域ごとに販売先を制御できる設計(権利配慮の観点も含む)や、将来的なテーマページ、公式バッジ付与といった販売促進機能もアナウンスされました。2026年上期には鑑定を組み込むことで、ストアとしての信頼性をさらに底上げします。
要素 | 事業者の負担軽減ポイント | 補足 |
---|---|---|
決済 | 多通貨・現地ウォレットまでメルカリ側が実装 | Stripe連携で安定稼働と不正対策 |
物流・通関 | 国・地域ごとの配送方式を最適化 | 佐川急便などとの連携、同梱発送で送料低減 |
言語・顧客対応 | AI翻訳と標準化したCS設計 | 海外購入者の不安点を集約して解消 |
販売管理 | 「メルカリShops」UIで出品・受注・入金 | 新規ツール導入コストがほぼ不要 |
信頼性の担保 | 全品検品・鑑定・公式バッジ | 高額品や限定品で効果を発揮 |
「エンタメ・ホビー」に賭ける合理性──ファンダム需要×在庫の厚み
越境ECで日本が世界に抜きん出やすいのは、アニメ、ゲーム、キャラクター、トレカ、フィギュア、同人文化などの“ファンダム消費”です。価格だけで戦う市場ではないため、在庫の希少性・状態・真贋が価値の源泉になります。メルカリはここに全品検品や鑑定、予約販売・オークションなどの機能を重ね、購入ハードルを制度で下げに行きます。ファンの熱量は国境を越えますが、購入プロセスの摩擦は国境ごとに違う──その摩擦を設計と制度で吸収するのが本戦略の骨格です。
[日本の出品・在庫] ──(検品/鑑定/翻訳/決済/配送)──> [海外のファン] ↑ ↓ [公式バッジ/権利配慮/テーマ露出] [予約・オークション・再販売]
競合環境と差別化──“日本発コンテンツ×制度的安心”という勝ち筋
グローバルECはAmazonやeBay、東南アジアではShopee、低価格大量供給ではTemuなど強者ひしめく市場です。メルカリの差別化は、日本発コンテンツに対する圧倒的な在庫厚と、C2Cで磨かれた発見性の高いUI、そして全品検品・鑑定・関税込み配送といった制度的な“安心”にあります。さらに、海外出品に広げる前に海外購買の体験を磨き切るという順序選択は、プラットフォームの評判形成において合理的です。米国の既存C2C事業とは切り離し、まずは“日本発を買うための越境窓口”としての立ち位置を強固にするシナリオが想定されます。
項目 | メルカリ | Amazon/eBay | Shopee | Temu |
---|---|---|---|---|
主戦場 | 日本発コンテンツと中古の厚い在庫 | 総合EC/グローバル | 東南アジアEC | 超低価格大量供給 |
安心施策 | 全品検品・鑑定・関税込み配送 | 保証/返品制度中心 | 販売者評価中心 | 価格優位中心 |
UX設計 | 発見性の高いC2C発想 | 検索主導の棚EC | プロモ主導 | アプリ主導の衝動買い |
リスクと対応──為替、通関、遅延、権利、偽造。制度で潰すべき不安の正体
越境では、為替変動、通関手続き、配送遅延、関税・税制の不透明感、知的財産権、偽造品、言語トラブルなど、買い手も売り手も多層の不安を抱えます。今回の設計は、全品検品と鑑定で品質起点の不安を、関税込み配送や現地受取で金額・到達の不安を、AI翻訳と現地決済で手続き不安を、それぞれ制度として潰すアプローチです。さらに国・地域ごとの販売設定(権利配慮)を備えることで、そもそものトラブル発生確率を低減します。
リスク | 不安の源 | 対応 |
---|---|---|
品質・真贋 | 中古/限定品の状態不明 | 全品検品、あんしん鑑定、購入前情報の強化 |
金額不透明 | 関税・手数料の事前把握不可 | 関税込み配送、総額提示 |
配送トラブル | 遅延・紛失・受取不便 | 現地受取、追跡の一元化、同梱最適化 |
法務・権利 | 地域ごとの販売制限/権利侵害 | 販売先の制御、権利者連携、公式バッジ |
言語・決済 | 翻訳の不備/決済拒否 | AI翻訳、現地決済、Radarによる不正対策 |
買い手と売り手の体験差分──“偶然の発見”を越境の標準へ
買い手は母語のまま探索し、地元で使う決済で支払い、アプリで追跡し、慣れた場所で受け取る。売り手は国内向けの運用設計のまま出品し、メルカリ側の検品・物流・決済・CS基盤に乗せる。ここで重要なのは、両者の“認知負担”が著しく下がることです。買い手は「海外ECを使う」という構えをしなくなり、売り手は「越境ECを立ち上げる」という投資意思決定から解放される。プラットフォーム側が吸収した複雑性が、結果的に“発見の頻度”を増やします。
海外購入者:発見 → 翻訳理解 → 現地決済 → 追跡 → 受取 → 評価 日本の出品者:出品 → 受注 → 入金管理 → 検品/配送段取り → CS対応 共通:アプリが「不安」と「手間」を代替し、偶然の発見を頻度化
現場からの勝ち筋──「秋葉原の小さな専門店」が台湾のファンを掴むまで
たとえば秋葉原の中古フィギュア店。これまで越境ECに参入できなかったのは、決済、通関、言語、配送の壁が原因でした。グローバルEC基盤で「メルカリShops」に出品すれば、在庫はそのまま海外のファンに可視化され、AI翻訳で商品説明や状態表記が理解され、現地決済でカゴ落ちが減り、全品検品で不安が消えます。台湾のユーザーはセブン-イレブンで受け取れ、購入前に総額が見える米国では関税込み配送で心理的障壁が下がる。特に一点物・状態差が価値の源泉になるホビー商材では、この“制度的安心”が購買意志決定を大きく押し上げます。
在庫登録(Shops) → 自動翻訳で海外可視化 → 海外注文 ↓ ↓ 国内検品 → 国際配送段取り → 現地受取 → 入金
数字で読み解く「準備完了」のサイン──40億品の在庫と越境GMVの伸長
累計出品40億品という在庫の厚みは、プラットフォーム上の発見体験に直結します。この“棚”が厚ければ厚いほど、越境でも偶然の発見が起きやすくなる。さらに越境取引の流通総額は過去3年で15倍以上、直近では年間900億円超へ拡大しており、Web版の段階展開から、アプリでの体験統合へと移行する準備が整っていたことが数字から見て取れます。土台となる実需が既にあるからこそ、制度の実装(検品・鑑定・関税込み・現地受取)に投資する意味があるのです。
成長イメージ:■■■■□□□□□□□□(開始期) ■■■■■■■■□□□□□□(Web版展開) ■■■■■■■■■■■■□□(アプリ統合へ)
ここからの注目ポイント──プロダクトの磨き込みと市場ごとの「最後の一歩」
アプリ自体は機能拡張が続きます。UI/UXの継続改善に加え、あんしん鑑定や公式バッジ、テーマページの導入で露出と信頼性を高めていくでしょう。一方で市場ごとに「最後の一歩」は異なります。米国では関税・返品・配送遅延への不安、台湾・香港では受取導線の最適化、欧州では税制・権利対応など、個別の摩擦を潰す実務が続きます。グローバルアプリは“越境のOS”です。OSを標準化しながら、プラグイン的に市場ごとの要件をハンドリングできるか──ここが勝負の見どころです。
米国:関税/返品/配送の心理負担 → 関税込み/追跡強化/返品導線の明確化 台湾:生活導線に溶け込む受取 → コンビニ受取/同梱最適化 欧州:税制/権利/多言語 → 販売先制御/権利配慮/翻訳品質の継続改善
結論──「日本の棚」を世界へ。その最短距離を制度で敷く
グローバルアプリは、海外の人々にとって日本の“棚”をそのまま手元に持ってくる発想です。C2Cで磨いた発見体験に、検品・鑑定・関税込み・現地決済・現地受取という制度的安心を重ねる。越境の複雑性をプロダクトが背負い、買い手と売り手の認知負担を薄める。シンプルに言えば「日本の在庫を、世界で最短に買えるようにするインフラ」が立ち上がったということです。勝てる土俵から勝ち筋を積み上げる順序設計と、制度の作り込み。その両輪が回り始めました。
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