宣伝失礼しました。本編に移ります。
インターネットで情報を収集する際、当たり前のように利用する検索エンジン。その裏側で、広告の成果を大きく左右する「検索クエリ」という概念があることをご存知でしょうか。似た言葉に「キーワード」も存在するため、意味を正しく理解しないまま混同してしまっている方も少なくありません。しかし、この検索クエリを深く理解し、戦略的に活用することで、ユーザーが真に求める情報やコンテンツを的確に把握し、広告の費用対効果を劇的に向上させることが可能です。本記事では、検索クエリの基本的な定義から、広告運用における具体的な分析・活用方法まで、明日から実践できるノウハウを網羅的に解説いたします。
検索クエリとは何か?その本質を理解する
まず初めに、「検索クエリ」という言葉の定義を正確に押さえましょう。「クエリ(Query)」とは、英語で「質問」「問い合わせ」を意味する言葉です。ここから派生して、ITの文脈ではデータベースから特定の情報を引き出すための命令文を指します。この概念を検索エンジンに当てはめたものが「検索クエリ」です。つまり、検索クエリとは、ユーザーがGoogleやYahoo!といった検索エンジンの検索窓に、情報を求めて実際に入力した「具体的な言葉やフレーズそのもの」を指します。それは、単一の単語であることもあれば、複数の単語を組み合わせた文章に近い形であることもあります。例えば、「ノートパソコン おすすめ」や「東京駅 ランチ 個室」といった、ユーザーの頭の中に浮かんだ生の言葉が、すべて検索クエリとなるのです。この検索クエリは、ユーザーの悩み、欲求、興味関心を直接的に反映した、極めて価値の高い「一次情報」であると言えます。広告運用において、このユーザーの生の声とも言える検索クエリを分析することが、成果向上の第一歩となります。
検索クエリとキーワードの決定的違い
検索クエリとしばしば混同されるのが「キーワード」です。この二つの違いを明確に区別することは、特にリスティング広告(検索連動型広告)を運用する上で極めて重要です。両者は密接に関連していますが、その主体と目的において決定的な違いが存在します。
主体と視点の違い:ユーザー視点か、広告主視点か
最も本質的な違いは、その言葉を発する「主体」にあります。
検索クエリ:主体は「ユーザー」です。ユーザーが自身の言葉で、自由な発想で検索窓に入力した、加工されていない生の言語です。その目的は、自身の疑問を解決したり、欲求を満たすための情報を得ることです。
キーワード:主体は「広告主(マーケティング担当者)」です。広告主が「このような検索クエリで検索するユーザーに、自社の広告を表示させたい」という意図をもって、広告管理ツール(Google広告やYahoo!広告)に登録・設定する語句です。その目的は、自社の製品やサービスに関心を持つ可能性のある潜在顧客をターゲティングし、広告を表示させることです。
簡潔に言えば、「ユーザーが入力するのが検索クエリ」「広告主が設定するのがキーワード」という関係性になります。広告主は、ユーザーが使いそうな無数の検索クエリを予測し、それを代表する形でキーワードを登録します。そして、検索エンジンは、ユーザーが入力した検索クエリと、広告主が登録したキーワードのマッチングを行い、広告を表示するかどうかを判断しているのです。
粒度と具体性の違い:具体的か、抽象的・代表的か
検索クエリとキーワードでは、その言葉の「粒度」や「具体性」も大きく異なります。
検索クエリ:非常に具体的で、多種多様です。「渋谷 ランチ 安い パスタ」「ノートパソコン 持ち運びしやすい バッテリー長持ち」のように、ユーザーの状況や要望が詳細に反映されるため、その種類はほぼ無限に存在します。これらは「ロングテールクエリ」とも呼ばれ、一つ一つの検索回数は少ないものの、ユーザーの意図が明確であるという特徴があります。
キーワード:検索クエリと比較して、より抽象的で代表的な語句が設定される傾向にあります。例えば、上記の検索クエリに対して、広告主は「渋谷 ランチ」や「ノートパソコン 軽量」といったキーワードを登録します。これは、細かすぎる検索クエリをすべて登録するのは非現実的であるため、ある程度の検索ボリュームがあり、多くの関連クエリをカバーできる代表的な語句をキーワードとして設定するためです。
広告運用では、この「検索クエリ(具体的)」と「キーワード(代表的)」の間のギャップを分析することが重要になります。想定していたキーワードに対して、実際にどのような検索クエリで広告が表示・クリックされているかを確認することで、ユーザーの真のニーズを発見し、広告設定を最適化していくことが可能となるのです。
検索クエリが解き明かす「検索意図」の重要性
検索クエリがSEOや広告運用において極めて重要な役割を担う最大の理由は、それがユーザーの「検索意図(インテント)」を最も雄弁に物語るからです。検索意図とは、ユーザーがその検索クエリを入力した背景にある「目的」や「動機」を指します。この検索意図を正確に読み解くことができれば、ユーザーが求めている情報や解決策を的確に提供でき、結果として広告のクリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)の向上に直結します。
例えば、同じ「プログラミングスクール」というキーワードをターゲットにしていても、実際の検索クエリは多岐にわたります。
・「プログラミングスクール おすすめ」:複数のスクールを比較検討し、第三者の評価を知りたい意図。
・「プログラミングスクール 料金」:具体的な費用を知り、自身の予算と照らし合わせたい意図。
・「プログラミングスクール 社会人 未経験」:自身の状況(社会人・未経験)でも通えるスクールを探している意図。
・「A社 プログラミングスクール 評判」:特定のスクール(A社)に興味があり、実際の利用者の声を知りたい意図。
これらの検索クエリから読み取れる検索意図は、それぞれ微妙に異なります。この意図の違いを無視して、すべてに同じ広告文、同じランディングページを表示していては、高い成果は望めません。「おすすめ」を探している人には比較記事風の広告文やLPを、「料金」を気にしている人には料金プランを明記した広告文やLPを見せるなど、検索意図に寄り添ったアプローチが不可欠です。検索クエリを分析することは、ユーザー一人ひとりの心の内を覗き込み、最適なコミュニケーション戦略を立てるための羅針盤を手に入れることに他ならないのです。
検索クエリには種類がある
ユーザーの検索意図をより深く理解するために、検索クエリは一般的に3つの主要な種類に分類されます。この分類を理解することで、各クエリの背後にあるユーザーの心理状態や、コンバージョンへの距離感を把握し、広告戦略をより精緻に組み立てることができます。
インフォメーショナルクエリ(情報収集型クエリ)
インフォメーショナルクエリは、別名「Knowクエリ」とも呼ばれ、ユーザーが「何かを知りたい」「情報を得たい」という目的で検索する際に使用するクエリです。これは最も一般的なクエリの種類であり、検索全体の大部分を占めると言われています。
具体例:
・「〇〇 とは」
・「肩こり 原因」
・「最新スマホ 比較」
・「投資信託 始め方」
特徴とアプローチ:
この段階のユーザーは、まだ具体的な商品購入やサービスの申し込みを考えているわけではなく、あくまで情報収集の段階にいます。そのため、直接的なコンバージョンには結びつきにくい傾向があります。しかし、彼らは将来の顧客候補であり、この段階で有益な情報を提供し、接触を持つことは非常に重要です。広告アプローチとしては、直接的な販売を促すのではなく、課題解決に役立つブログ記事やホワイトペーパー、導入事例などをまとめたランディングページへ誘導し、まずは役立つ情報を提供することに徹します。これにより、ユーザーの課題解決を手助けし、自社をその分野の専門家として認識させることが可能になります。直接的な成果は見えにくいものの、将来のコンバージョンに向けた種まきとして、戦略的に取り組む価値のあるクエリです。
ナビゲーショナルクエリ(案内型クエリ)
ナビゲーショナルクエリは、別名「Goクエリ」や「指名検索」とも呼ばれ、ユーザーが特定のウェブサイトやページ、あるいは実店舗の場所へ「行きたい」「アクセスしたい」という明確な目的を持って検索する際に使用するクエリです。
具体例:
・「YouTube」
・「トヨタ公式サイト」
・「〇〇(自社名) ログイン」
・「渋谷ヒカリエ アクセス」
特徴とアプローチ:
このクエリを入力するユーザーは、すでに行き先が決まっています。自社名や自社サービス名での検索がこれに該当し、コンバージョンへの意欲が非常に高い、極めて質の良いユーザー層と言えます。広告運用においては、自社名での検索に対しては必ず広告を表示させ、競合他社にユーザーを奪われる機会を防ぐことが鉄則です。特に、競合が自社名をキーワードに設定して広告を出稿している場合、自社広告が表示されないと、本来獲得できたはずのユーザーをみすみす逃すことになります。広告文では、公式サイトであることを明確に伝え、ユーザーが探している情報(ログインページ、キャンペーン情報など)へ直接遷移できるサイトリンクを表示するなど、利便性を高める工夫が効果的です。
トランザクショナルクエリ(取引型クエリ)
トランザクショナルクエリは、別名「Doクエリ」や「Buyクエリ」とも呼ばれ、ユーザーが「何かをしたい」「取引をしたい」という具体的な行動を目的として検索する際に使用するクエリです。商品購入、資料請求、問い合わせ、会員登録、ダウンロードなど、何らかのコンバージョンに直結する行動意欲が最も高いクエリです。
具体例:
・「〇〇(商品名) 購入」
・「英会話スクール 体験申し込み」
・「SFAツール 資料請求」
・「ウイルスソフト ダウンロード」
特徴とアプローチ:
このクエリは、広告運用において最も重要視されるべきものです。ユーザーはすでに行動を起こすことを決めており、あとは「どこで」「どの商品(サービス)を」選ぶかという最終段階にいます。そのため、広告の費用対効果が最も高くなる傾向があります。広告アプローチとしては、価格、特典、限定オファーなどを広告文に含め、ユーザーの最後のひと押しを促すことが重要です。「送料無料」「初回限定割引」「無料トライアル実施中」といった具体的なメリットを提示し、コンバージョンに特化したランディングページへ直接誘導します。このクエリで検索するユーザーを確実に獲得できるかどうかは、事業の成果に直接的な影響を与えます。
すべてがこの3つに当てはまるわけでもない
上記の3分類は非常に有用ですが、全ての検索クエリが綺麗にどれか一つに当てはまるわけではありません。実際には、複数の意図が混在する「複合クエリ(ハイブリッドクエリ)」も数多く存在します。
例えば、「TOYOTA」という一見ナビゲーショナルクエリに見える検索も、文脈によっては多様な意図を持ち得ます。
・公式サイトに行きたい(ナビゲーショナル)
・TOYOTAという企業について知りたい(インフォメーショナル)
・車の購入を検討しており、車種ラインナップを見たい(トランザクショナルの初期段階)
また、「マーケティングオートメーション 比較」というクエリは、各ツールの情報を知りたいという「インフォメーショナル」な側面と、導入するツールを選定したいという「トランザクショナル」な側面を併せ持っています。このように、クエリの背後にある意図のグラデーションを理解し、単純な分類に固執せず、ユーザーがどのような状況で、何を求めているのかを柔軟に推察することが、高度な広告運用には不可欠です。これらの複合クエリに対しては、ユーザーが求めるであろう複数の情報(比較情報、価格、導入事例、資料請求ボタンなど)をバランス良く配置したランディングページを用意するといった、複合的なアプローチが有効となります。
検索クエリの調べ方
自社サイトにどのような検索クエリでユーザーが流入しているのか、また、自社の広告がどのような検索クエリで表示されているのかを把握することは、広告運用改善の第一歩です。幸い、GoogleやYahoo!は、これらの貴重なデータを分析するための優れたツールを無料で提供しています。ここでは、主要な調査方法について詳しく解説します。
Googleサーチコンソールを利用する
Googleサーチコンソール(Google Search Console)は、Google検索における自社サイトのパフォーマンスを監視、分析できる無料のツールです。主にSEO(検索エンジン最適化)の文脈で語られることが多いですが、広告運用者にとっても重要な示唆を与えてくれます。このツールでは、広告を経由しない「自然検索(オーガニック検索)」で、ユーザーがどのような検索クエリを使って自社サイトにたどり着いたかを確認できます。
確認できる主なデータ:
・クエリ:ユーザーが実際に入力した検索クエリ。
・表示回数:そのクエリで自社サイトがGoogleの検索結果に表示された回数。
・クリック数:検索結果から自社サイトがクリックされた回数。
・CTR(クリック率):表示回数に対するクリック数の割合(クリック数 ÷ 表示回数)。
・掲載順位:そのクエリにおける自社サイトの平均掲載順位。
確認方法:
1. Googleサーチコンソールにログインします。
2. 左側のメニューから「検索パフォーマンス」内の「検索結果」をクリックします。
3. 画面中央の「クエリ」タブに、検索クエリの一覧が表示されます。
4. グラフの上部にある「合計クリック数」「合計表示回数」「平均CTR」「平均掲載順位」をクリックすることで、各指標の表示・非表示を切り替えられます。
広告運用への活用ヒント:
自然検索でコンバージョンに繋がっているクエリは、リスティング広告でも有望なキーワード候補となります。逆に、広告では予算の都合上カバーしきれないインフォメーショナルクエリを自然検索で獲得できているかを確認し、広告とSEOの役割分担を考える上でも役立ちます。
Googleアナリティクスを利用する
Googleアナリティクス(現GA4)は、サイトにアクセスしたユーザーの行動を詳細に分析できる無料のアクセス解析ツールです。GoogleサーチコンソールやGoogle広告と連携させることで、検索クエリのデータをより深く、多角的に分析することが可能になります。
自然検索クエリの確認方法(要サーチコンソール連携):
Googleアナリティクス(GA4)とGoogleサーチコンソールを連携すると、GA4の管理画面内でサーチコンソールのデータを確認できるようになります。
1. GA4にログインし、左側のメニューから「レポート」をクリックします。
2. 「集客」セクション内の「Search Console」>「クエリ」をクリックします。
3. これにより、自然検索での流入クエリと、その表示回数やクリック数などを確認できます。GA4と連携するメリットは、これらのクエリで流入したユーザーが、サイト内でどのような行動をとり、コンバージョンに至ったかを紐づけて分析できる点にあります。
広告経由の検索クエリの確認方法(要Google広告連携):
Google広告と連携している場合、広告経由の検索クエリ(Google広告では「検索語句」と呼ばれる)もGA4で確認できます。
1. 「レポート」>「集客」>「概要」に移動します。
2. 「セッションのデフォルト チャネル グループ」の表で「有料検索(Paid Search)」をクリックします。
3. 次の画面で、「セッションのGoogle広告検索語句」をプライマリディメンションとして選択すると、広告経由の検索語句とその後のサイト内行動(エンゲージメント率、コンバージョン数など)を一覧で確認できます。これにより、「どの検索語句が最も収益に貢献しているか」といった、より事業成果に直結した分析が可能になります。
検索クエリの「other」とは
GoogleサーチコンソールやGoogleアナリティクスでデータを見ていると、「(other)」という項目が表示されることがあります。これは、個々の検索回数が非常に少ない、いわゆる「ロングテール」な検索クエリを、システムの処理負荷やレポートの可読性の観点から、一つにまとめて表示しているものです。Googleの仕様上、レポートに表示できる行数(カーディナリティ)には上限があり、それを超える膨大な種類のクエリが存在する場合、一部が「(other)」として集約されます。個別のクエリは確認できませんが、「検索回数の少ない多様なクエリからの流入も一定数存在する」という事実を示しており、ユーザーの検索行動の多様性を物語っています。
検索クエリの「not set」とは
一方、「(not set)」という表示も頻繁に見られます。これは「値が設定されていない」「何らかの理由でデータを取得できなかった」ことを示すプレースホルダーです。「(not set)」が表示される原因はレポートによって様々ですが、例えばGoogle広告の検索語句レポートで表示される場合、広告とアナリティクスの連携設定に不備がある、自動タグ設定が有効になっていない、リダイレクトによってデータが欠損している、などの技術的な問題が考えられます。また、オーガニック検索のレポートで表示される場合は、プライバシー保護の観点から検索クエリ情報が提供されなかったケースなどが含まれます。この表示が多数を占める場合は、各種ツールの設定を見直す必要があるかもしれません。
Google広告を確認する
リスティング広告の運用において、検索クエリを分析するための最も直接的で重要な場所が、Google広告の管理画面です。ここで確認できるのは「検索語句レポート」です。前述の通り、Google広告では検索クエリのことを「検索語句」と呼びます。
確認方法:
1. Google広告の管理画面にログインします。
2. 左側のページメニューから「キーワード」をクリックし、展開されたメニューから「検索語句」を選択します。
3. ここに、設定したキーワードに対して、実際にユーザーが入力し、広告が表示・クリックされた検索語句の一覧が表示されます。
分析のポイント:
このレポートでは、各検索語句に対する表示回数、クリック数、CTR、平均CPC(クリック単価)、費用、そしてコンバージョン数やCVR(コンバージョン率)、CPA(顧客獲得単価)といった、広告成果に直結する指標を一覧で確認できます。このデータを分析することで、「どの検索語句が成果に貢献していて、どの検索語句が無駄なコストを発生させているのか」が一目瞭然となります。このレポートは、広告の費用対効果を改善するための宝の山であり、定期的に確認し、後述する最適化アクションに繋げることが不可欠です。
Yahoo!広告を確認する
Yahoo! JAPANにリスティング広告を出稿している場合は、Yahoo!広告の管理画面で検索クエリを確認します。基本的な考え方や分析方法はGoogle広告と同様です。
確認方法:
1. Yahoo!広告の広告管理ツールにログインします。
2. 上部の「検索広告」タブを選択します。
3. 画面中央の表示内容選択で「キーワード」をクリックします。
4. サブタブの中から「検索クエリーを表示」を選択すると、検索クエリーの一覧が表示されます。
分析のポイント:
Yahoo!広告では、検索クエリは「検索クエリー」とカタカナで表記されます。表示される指標はGoogle広告とほぼ同様で、各検索クエリーごとの表示回数、クリック数、コンバージョンデータなどを確認できます。Googleとはユーザー層が若干異なる場合があるため、Yahoo!広告独自の検索クエリーの傾向が見られることもあります。Google広告と同様に、定期的な分析と最適化が重要です。データはCSV形式などでダウンロード(エクスポート)できるため、Excelやスプレッドシート上で加工・分析することも有効です。
検索クエリの活用方法
検索クエリのデータをただ眺めているだけでは意味がありません。そのデータからユーザーの意図を読み解き、具体的なアクションに繋げてこそ、広告の成果は向上します。ここでは、検索クエリレポートを分析した後の、実践的な活用方法を体系的にご紹介します。
トランザクションクエリをリスティング広告に当たり前に活用する
前述の通り、トランザクションクエリはコンバージョン意欲が非常に高いユーザーが使用するため、広告運用における最優先ターゲットとなります。「商品名 購入」「サービス名 資料請求」といったクエリは、成果に直結する可能性が極めて高い金の卵です。
具体的なアクション:
・キーワードとしての追加:検索語句レポートで見つかった成果の高いトランザクションクエリは、すぐに「完全一致」や「フレーズ一致」でキーワードとして登録し、入札単価を強化します。これにより、そのクエリで検索したユーザーに対して、より確実に、より上位に広告を表示させることができます。
・専用の広告グループ作成:特に重要なトランザクションクエリについては、専用の広告グループを作成し、そのクエリに特化した広告文とランディングページを用意します。例えば「SFA 料金 比較」というクエリ専用のグループを作り、広告文に「主要3社の料金を徹底比較!」と入れ、LPも料金比較表から始まる構成にするといった最適化が考えられます。
ただし、効果が高いことは競合他社も熟知しているため、これらのクエリは入札競争が激化し、クリック単価が高騰しがちです。費用対効果を見極めながら、戦略的に入札単価を調整していく必要があります。
インフォメーショナルクエリ×記事広告でコンバージョンを狙う
インフォメーショナルクエリは、直接的なコンバージョンには結びつきにくいものの、将来の顧客となりうる潜在層へのアプローチとして非常に重要です。「〇〇 選び方」「△△ 課題」といったクエリで検索しているユーザーは、まだ購入段階にはいませんが、強い興味や問題意識を持っています。
具体的なアクション:
・コンテンツ(記事)への誘導:これらのクエリに対しては、商品を売り込む広告ではなく、ユーザーの疑問や課題を解決するための有益な情報を提供する記事コンテンツ(ブログ記事やオウンドメディアの記事)へ誘導します。例えば「テレワーク 運動不足 解消法」というクエリに対して、自宅でできる簡単なエクササイズを紹介する記事LPを用意し、その中で自社の健康器具を「解決策の一つ」として自然な形で紹介します。
・リマーケティングリストの構築:記事コンテンツにアクセスしたユーザーをリマーケティング(リターゲティング)リストに追加しておきます。一度有益な情報に触れたユーザーは、自社に対してポジティブな印象を持っている可能性が高いです。後日、彼らがより具体的な検討段階に進んだ際に、トランザクショナルな訴求の広告を配信することで、効率的にコンバージョンを獲得することが可能になります。
このアプローチは、ユーザーの検討段階に合わせた段階的なコミュニケーションを設計する上で不可欠です。
キーワードの除外設定のヒントにする
検索語句レポートの最も重要な活用法の一つが、無駄な広告費を削減するための「除外キーワード設定」です。設定したキーワード(特に部分一致)は、意図しない検索クエリでも広告を表示させてしまうことがあります。これらを特定し、除外することが費用対効果の改善に直結します。
具体的なアクション:
・コンバージョンに繋がらないクエリの特定:検索語句レポートを確認し、「クリックはされているが、全くコンバージョンに繋がっていない」「明らかに自社のターゲットとは異なる意図の」クエリをリストアップします。例えば、法人向けSaaSを提供している場合に「SaaS 学生 無料」といったクエリでクリックが発生していたら、これは無駄なコストです。
・除外キーワードとして登録:特定した無関係な単語(この例では「学生」「無料」)を、キャンペーンや広告グループの「除外キーワード」として登録します。これにより、今後これらの単語を含む検索クエリでは広告が表示されなくなり、無駄なクリックを防ぐことができます。
この作業は地道ですが、広告予算を本当に見込みのあるユーザーに集中させるために、定期的に必ず行うべき極めて重要な最適化作業です。
【実践編】検索クエリ分析を広告成果に繋げる5つのアクションプラン
ここからは、検索クエリ分析を広告成果に直結させるための、より具体的で体系的な5つのアクションプランを解説します。これらのアクションを定期的なサイクルとして回していくことで、広告アカウントは継続的に改善されていきます。
アクション1:キーワードの追加と最適化
検索語句レポートは、新たな「お宝キーワード」の宝庫です。
1. レポートの抽出: Google広告またはYahoo!広告から、一定期間(例: 過去30日間)の検索語句レポートをダウンロードします。
2. 有望クエリの特定: ダウンロードしたデータにフィルタをかけ、「コンバージョンが1件以上発生している」かつ「キーワードとして未登録」の検索語句を抽出します。これらは、成果に繋がることが実証済みの有望なクエリです。
3. キーワードとして追加: 抽出した検索語句を、関連性の高い広告グループにキーワードとして追加します。この際、マッチタイプは「完全一致」または「フレーズ一致」を選択するのが基本です。これにより、その有望クエリでの広告表示をコントロールしやすくなります。
4. 入札単価の調整: 追加したキーワードには、実績に基づいて適切な入札単価を設定します。CPA(顧客獲得単価)が良好なクエリであれば、やや強気の単価を設定して表示機会を増やす戦略も有効です。
アクション2:無駄な広告費を削減する「除外キーワード設定」
広告のパフォーマンス向上は、獲得を増やすことと、無駄を減らすことの両輪で成り立ちます。
1. レポートの抽出と分析: アクション1と同様にレポートをダウンロードし、今度は「コンバージョンが0件」で「一定以上のコスト(費用)が発生している」検索語句を抽出します。
2. 除外すべき単語の判断: 抽出したクエリの中に、明らかに自社のビジネスと無関係な単語や、意図が異なる単語がないかを確認します。例:「修理」「中古」「無料」「求人」「とは」「やり方」など。例えば、新品のPCを販売している場合に「pc 修理」というクエリは除外すべきです。
3. 除外キーワードとして登録: 判断した単語を「除外キーワード」として登録します。この際、キャンペーン単位で除外するか、特定の広告グループのみで除外するかを適切に判断します。広く無関係な単語(例: 求人)はキャンペーン単位で、特定の製品にのみ関連する除外単語(例: ある製品の色違い)は広告グループ単位で設定するのが効率的です。
4. ネガティブキーワードリストの活用: 複数のキャンペーンで共通して除外したい単語群は、「ネガティブキーワードリスト」として作成し、各キャンペーンに適用すると管理が容易になります。
アクション3:クリック率(CTR)を劇的に改善する広告文の作成
検索クエリは、ユーザーが何に興味を持っているかを直接示しています。これを広告文に反映させることで、ユーザーとの関連性が高まり、CTRの向上が期待できます。
1. クエリのグルーピング: 検索語句レポートを見て、共通の意図や単語を持つクエリをグルーピングします。例:「〇〇 料金」「〇〇 価格」「〇〇 費用」といった料金関連のクエリグループ。
2. 意図を反映した広告文の作成: グループ化したクエリの意図に合致する広告文を作成します。料金関連のグループであれば、「月額〇〇円から」「初期費用無料」といった具体的な価格情報を広告の見出しや説明文に含めます。
3. キーワード挿入機能の活用: 広告見出しに `{KeyWord:デフォルトテキスト}` のように記述することで、ユーザーが検索した語句に近いキーワードを自動で表示させることができます。これにより、広告文の関連性が動的に高まります。
4. A/Bテストの実施: 新しく作成した広告文と既存の広告文をレスポンシブ検索広告内で同時に配信し、どちらのCTRやCVRが高いかをテストします。このテストと改善のサイクルを回し続けることが、広告文のパフォーマンスを最大化する鍵です。
アクション4:コンバージョン率(CVR)を高めるランディングページ(LP)の最適化
ユーザーを広告で惹きつけても、遷移先のランディングページ(LP)が検索クエリの意図とずれていては、コンバージョンには至りません。
1. 広告グループとLPの整合性確認: 特定の広告グループに流入している主要な検索クエリ群と、そのグループに設定されているLPの内容が一致しているかを確認します。「比較」というクエリで流入しているのに、LPが単一商品の紹介ページになっていないか、といった視点でチェックします。
2. LPコンテンツの改善: 検索クエリから読み取れるユーザーの疑問や不安を、LP内で先回りして解消します。例えば、「〇〇 デメリット」というクエリでの流入が多い場合、LP内で正直にデメリットや注意点を述べ、それに対する解決策やメリットを提示することで、逆に信頼性が高まりCVRが向上することがあります。
3. 新しいLPの作成: 既存のLPでは対応しきれない、特定の意図を持つ重要な検索クエリ群が見つかった場合は、そのクエリ群に特化した新しいLPを作成することも検討します。これにより、ユーザー体験が大幅に向上し、CVRの改善が期待できます。
アクション5:動的検索広告(DSA)の効果的な活用
動的検索広告(Dynamic Search Ads)は、Webサイトのコンテンツに基づいて、関連性の高い検索クエリに対して広告見出しとLPを自動的に生成・表示する広告形式です。
1. 機会損失の発見: 手動でキーワードを登録する方法では、どうしてもカバーしきれない膨大な種類のロングテールクエリが存在します。DSAを活用することで、こうした想定外の検索クエリからの流入を捉え、新たなコンバージョン機会を発見することができます。
2. 効果的な設定: DSAの対象として、サイト全体ではなく、特定のカテゴリやURLを指定することで、広告の関連性をコントロールします。例えば、製品情報ページのみを対象にする、といった設定が可能です。
3. 検索語句レポートの分析とフィードバック: DSAで成果の上がった検索語句は、アクション1で述べたように通常のキーワードとして登録し、入札を強化します。逆に、成果の出ない無関係なクエリは、除外キーワードとして設定します。このように、DSAは「新たなキーワードを発掘するためのリサーチツール」としても非常に有効に機能します。
まとめ
本記事では、「検索クエリ」という概念の基本的な定義から、広告運用における具体的な分析・活用方法までを体系的に解説いたしました。検索クエリは、単なる文字列の羅列ではありません。それは、情報を求めるユーザー一人ひとりの「生の声」であり、彼らの悩みや欲求が凝縮された極めて価値の高いデータです。
検索クエリとキーワードの違いを明確に理解し、ユーザーの検索意図を深く読み解くこと。そして、GoogleサーチコンソールやGoogle広告といったツールを駆使して得られたデータを、具体的な5つのアクションプラン(キーワード追加、除外設定、広告文改善、LP最適化、DSA活用)に落とし込んでいくこと。この一連のプロセスを継続的に、そして粘り強く実践し続けることが、競争の激しい市場で広告成果を最大化するための唯一の道と言っても過言ではありません。
本記事で紹介した知識やノウハウが、貴社の広告運用を一段上のレベルへ引き上げる一助となれば幸いです。まずは自社のアカウントの検索語句レポートを開き、ユーザーの声に耳を傾けることから始めてみてください。
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