宣伝失礼しました。本編に移ります。
本記事は、Webマーケティングにおける「獲得型広告」の成果を最大化することのみに焦点を絞り、そのための思考フレームワークとしての「カスタマージャーニー」を、明日から現場で活用できるレベルまで徹底的に解説するものです。運用型広告のスペシャリストである筆者が、その知識と経験のすべてを注ぎ込み、具体的な手法から業界別の実践例まで、網羅的に、そして深く掘り下げていきます。この記事を読み終えたとき、あなたは広告費の無駄をなくし、コンバージョン率を飛躍的に向上させるための、明確な羅針盤を手にしていることでしょう。本稿は、小手先のテクニックではなく、広告運用の根幹を成す戦略的思考を身につけたいと願う、すべてのビジネスパーソン、マーケター、広告運用担当者のために執筆しました。総文字数30,000字を超えるこの長い旅路の果てに、あなたの広告運用が新たな次元へと到達することを、ここにお約束します。
獲得型広告で成果を出す、ただ一つの真実。それは「顧客を深く知る」こと
リスティング広告、SNS広告、ディスプレイ広告。私たちは日々、無数の「獲得型広告」を運用しています。その目的はただ一つ、「コンバージョン(成果)」を獲得すること。商品購入、資料請求、問い合わせ、その形は様々ですが、最終的な成果地点へとユーザーを導くことが私たちの至上命題です。しかし、思うように成果が上がらない、CPA(顧客獲得単価)が高騰し続ける、クリックはされるのにコンバージョンしない。このような悩みを抱えている広告運用担当者様は、決して少なくないはずです。なぜ、このような事態に陥るのでしょうか。最新の自動入札機能を使い、優れたクリエイティブを用意し、完璧なターゲティングを設定したはずなのに、なぜか成果に繋がらない。その根本的な原因は、多くの場合、たった一つのシンプルな事実に行き着きます。それは、「顧客のことを、本当の意味で理解できていない」という事実です。
私たちは、広告管理画面の数字やデータを見ることに慣れすぎてしまい、その向こう側にいる「生身の人間」の姿を見失いがちです。どのような課題を抱え、何を求めて検索し、どの情報に心を動かされ、どのような不安を感じて購入をためらうのか。その一連の「旅」の全貌を、私たちはどれだけ解像度高く描けているでしょうか。この「顧客の旅」を可視化し、理解するための最強の思考フレームワークこそが、「カスタマージャーニー」なのです。本記事では、このカスタマージャーニーを、単なるマーケティング用語としてではなく、「獲得広告の成果を最大化するための、超実践的な武器」として捉え直し、その理論から具体的な作成方法、そして広告施策への落とし込みまでを、余すところなく解説していきます。需要創出やブランディングといった曖昧な概念は一切排除し、あくまで「獲得」という一点突破を目指します。この長い記事を読み終える頃には、あなたの広告運用における「顧客理解」のレベルは、競合他社が到達できない領域へと進化していることでしょう。
第1部:獲得広告のためのカスタマージャーニー基礎理論
カスタマージャーニーという言葉自体は、決して目新しいものではありません。しかし、その本質を「獲得広告」の文脈で正しく理解し、使いこなせている担当者は驚くほど少ないのが現状です。このセクションでは、まずカスタマージャーニーの基本的な概念を、獲得広告の成果向上という観点から再定義し、なぜ今、この思考法が広告運用者にとって不可欠な武器となるのかを明らかにします。
1-1. カスタマージャーニーとは何か?広告運用者のための再定義
一般的に、カスタマージャーニーとは「顧客が商品を認知し、興味を持ち、比較検討を経て購入し、最終的にそのファンになるまでの一連のプロセス(旅)」と説明されます。しかし、獲得広告のスペシャリストである私たちは、この定義をより鋭く、より実践的に捉え直す必要があります。私たちにとってのカスタマージャーニーとは、「ターゲット顧客が、広告で解決可能な自身の課題を自覚してから、実際に広告をクリックし、ランディングページでコンバージョンを完了するまでの、思考と感情、そして行動の全軌跡を記録した地図」である、と定義します。重要なのは、「広告で解決可能な課題」という点と、「コンバージョン完了まで」という範囲に絞り込んでいる点です。私たちは、壮大なブランドストーリーを語りたいわけではありません。あくまで、ユーザーが抱える「今、解決したい悩み」に対して、最適な広告を、最適なタイミングで提示し、最短距離でコンバージョンへと導く。そのための設計図こそが、私たちがこれから作り上げるカスタマージャーニーマップなのです。
1-2. なぜ、今カスタマージャーニーが「獲得広告」に必須なのか?
スマートフォンの普及と情報過多の時代を迎え、顧客の購買行動はかつてないほど複雑化しています。かつてのように、テレビCMで見て、店頭で購入するという単純なモデルは過去のものとなりました。現代の顧客は、SNSで偶然商品を見つけ、インフルエンサーのレビューを読み、検索エンジンで複数の競合製品を比較し、口コミサイトで評判を確かめ、ようやく購入に至る、というような複雑な経路を辿ります。この複雑化した「旅」の途中で、彼らは様々なタッチポイント(接点)で情報を収集し、意思決定を行っています。私たち広告運用者の仕事は、この無数のタッチポイントの中から、最も「コンバージョンに近い」タイミングと場所を見極め、的確なメッセージを届けることです。しかし、顧客の旅路全体を俯瞰できていなければ、私たちの広告は単なる「点」でしかなく、効果的なアプローチは望めません。例えば、まだ課題をぼんやりとしか認識していないユーザーに「今すぐ購入!」と訴えかける広告を配信しても、それは単なるノイズでしかありません。逆に、複数の商品をカートに入れて比較検討しているユーザーには、価格の優位性や送料無料といった最後の一押しとなる情報が必要です。カスタマージャーニーを描くことで、私たちは顧客が今、旅のどの段階にいるのかを正確に把握し、それぞれのステージに最適化された広告コミュニケーションを展開することが可能になります。これにより、無駄な広告費を削減し、CPAを劇的に改善することができるのです。これは、もはや「やれば有利になる」というレベルの話ではありません。複雑化する市場で生き残り、成果を出し続けるためには、「必須のスキル」であると断言できます。
1-3. カスタマージャーニーとセールスファネル:似て非なる二つの地図
カスタマージャーニーと混同されがちな概念に「セールスファネル」があります。ファネルは「漏斗(じょうご)」を意味し、多くの潜在顧客が徐々に絞り込まれ、最終的に購入顧客へと至るプロセスを、企業視点で量的に捉えるモデルです。例えば、「認知」が10,000人、「興味・関心」が1,000人、「比較検討」が100人、「購入」が10人、というように、各段階での離脱率や転換率を数値で管理するのに非常に有効なツールです。私たち獲得型広告の運用者も、広告の表示回数からクリック数、コンバージョン数へと至る流れをファネルで捉え、改善のボトルネックを探ります。しかし、ファネルには決定的な弱点があります。それは、あくまで「企業側から見た数字の流れ」であり、その裏にある顧客の「なぜ?」、つまり心理や感情、具体的な行動が見えないことです。なぜ、1,000人が興味を持ったのに、900人は比較検討に進まなかったのか?ファネルはその理由を教えてはくれません。一方で、カスタマージャーニーは、この「なぜ?」を解き明かすためのツールです。これは「顧客視点」の質的な地図であり、顧客が各ステージで何を考え、何を感じ、どのような行動をとっているのかを明らかにします。ファネルが「どこで問題が起きているか(Where)」を示すものだとすれば、カスタマージャーニーは「なぜ問題が起きているか(Why)」を教えてくれるものだと言えます。獲得広告で真の成果を上げるためには、この二つの地図を両手に持ち、量的データ(ファネル)で問題箇所を特定し、質的データ(カスタマージャーニー)でその原因を深く掘り下げ、具体的な改善施策を立案するという、両利きの思考が不可欠なのです。
第2部:【完全ステップ解説】成果直結型カスタマージャーニーマップ作成法
理論の理解だけでは、広告の成果は1円も上がりません。この第2部では、いよいよカスタマージャーニーマップを実際に作成していくための、具体的かつ実践的な手順を、5つのステップに分けて徹底的に解説します。ここで解説する方法は、私が数々のクライアントの広告成果を改善してきた中で体系化した、まさに「成果直結型」の作成法です。スプレッドシート一つあれば、今日からでも着手できます。さあ、一緒に最強の設計図を作り上げましょう。
Step 1:ゴール設定 ― すべての旅路の終着点を明確にする
何よりもまず最初に定義すべきは、「この旅のゴールは何か?」ということです。獲得広告におけるゴールとは、すなわち「コンバージョン」です。しかし、単に「コンバージョン」とするだけでは不十分です。BtoCのECサイトであれば「商品Aの購入完了」、BtoBのSaaS企業であれば「サービスBの無料トライアル登録完了」や「ホワイトペーパーCのダウンロード完了」というように、具体的かつ測定可能なアクションをゴールとして設定します。なぜなら、設定するゴールによって、そこに至るまでの顧客の「旅」の道のり、期間、思考プロセスが全く異なるからです。例えば、「高価格帯のBtoBツールの契約」をゴールとする場合、顧客は数ヶ月にわたって情報収集や社内調整を行う、長く複雑な旅をします。一方で、「1,000円のお試しコスメセットの購入」であれば、SNS広告を見てから数分で完了する、短い旅かもしれません。このゴールの解像度が、これから作成するマップ全体の解像度を決定します。まず、あなたのビジネスにとって最も重要なコンバージョンは何か、一つ、明確に定義してください。それが、すべての始まりとなります。
Step 2:ペルソナ設計 ―「誰」の旅路を描くのか?
次に、その旅をする主人公、「ペルソナ」を設定します。ペルソナとは、あなたの理想的な顧客像を、まるで実在する一人の人物かのように具体的に描き出したものです。多くの失敗するカスタマージャーニーマップは、このペルソナ設定が曖昧なまま進められています。「30代、女性、都内在住」といった漠然としたターゲット設定では、顧客のリアルな悩みや感情を捉えることは不可能です。獲得広告の成果を上げるためのペルソナ設計では、特に以下の項目を徹底的に深掘りする必要があります。
2-2-1. デモグラフィック(基本情報)を超えて
年齢、性別、居住地、職業、年収といった基本的な情報はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。私たちは、その人物の「ライフスタイル」や「価値観」にまで踏み込む必要があります。
- 情報収集のスタイル:主にどのような媒体から情報を得ているか?(例:専門的なWebメディアを信頼する、Instagramのインフルエンサー投稿を参考にする、YouTubeのレビュー動画を必ず見る、など)
- デジタルリテラシー:PCやスマートフォンの操作にどの程度習熟しているか?オンライン決済に抵抗はないか?
- 価値観:価格を最重視するのか、品質やブランドを重視するのか。時間を節約できること(効率性)に価値を感じるのか、体験そのもの(楽しさ)に価値を感じるのか。
これらの情報は、後に広告媒体を選定したり、クリエイティブの訴求軸を決定したりする上で、極めて重要な判断基準となります。
2-2-2.「獲得」に直結する課題と欲求の深掘り
ここが最も重要なポイントです。ペルソナが抱える「課題(ペイン)」と「欲求(ゲイン)」を、獲得広告のコンテキストで具体的に言語化します。
- 顕在的な課題(Pain):ペルソナが既に自覚している、明確な悩みや問題点は何か?(例:「毎月の広告運用レポート作成に10時間もかかっていて、コア業務を圧迫している」)
- 潜在的な課題(Latent Pain):ペルソナ自身はまだ気づいていないが、指摘されれば「確かにそうだ」と気づくであろう問題点は何か?(例:「レポート作成は自動化できるものであり、その時間を戦略立案に充てられることを知らない」)
- 顕在的な欲求(Gain):ペルソナが「こうなりたい」と明確に望んでいる状態は何か?(例:「レポート作成を自動化して、残業時間をゼロにしたい」)
- 潜在的な欲求(Latent Gain):ペルソナが想像もしていないような、理想の未来や得られるメリットは何か?(例:「自動化によって生まれた時間で新たな施策に挑戦し、社内で高く評価されたい」)
優れた獲得広告は、多くの場合、この「潜在的な領域」に光を当て、顧客に新たな「気づき」を与えることで、強い行動喚起を促します。ペルソナの課題と欲求をここまで深く解像度高く描けていれば、どのような言葉で語りかければ心が動くのか、自ずと見えてくるはずです。
2-2-3. 情報収集とペルソナ設定の方法
では、これらのペルソナ情報をどうやって収集するのか。決して想像だけで作ってはいけません。以下の一次情報、二次情報を活用します。
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一次情報(最も重要):
- 既存顧客へのインタビュー:「なぜ私たちの商品を選んでくれたのですか?」「購入前にどんなことで悩んでいましたか?」「他にどのサービスと比較しましたか?」といった質問を投げかけ、生の声を集めます。これが最も価値のある情報源です。
- 営業担当者やカスタマーサポートへのヒアリング:日々顧客と接している彼らは、顧客のリアルな悩みや不満、要望の宝庫です。
- アンケート調査:Webアンケートツールなどを活用し、定量的なデータを収集します。
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二次情報(一次情報の補完):
- Web上のレビューや口コミサイト:競合商品を含め、顧客がどのような点に満足し、不満を感じているのかを分析します。
- SNS上のハッシュタグ検索やキーワード検索:関連キーワードで検索し、ユーザーの生の声を収集します。
- 各種調査会社の公開データ:市場全体のトレンドや消費者動向を把握します。
これらの情報をもとに、ペルソナに具体的な名前と顔写真を与え、その人物のストーリーをA4一枚程度のシートにまとめ上げましょう。このシートが、今後のすべての広告施策のブレない「軸」となります。
Step 3:ステージ設定 ― 顧客の心理段階を定義する
ペルソナがゴールに至るまでの道のりを、いくつかの「ステージ(段階)」に分割します。このステージ分けが、顧客の心理状態に合わせた広告アプローチを可能にします。ここでは、獲得広告の文脈で最も汎用性が高く、実践的な5つのステージモデルを紹介します。ビジネスの特性に合わせて適宜カスタマイズしてください。
【獲得広告のための5ステージモデル】
- 課題認知ステージ:自分の抱える悩みや欲求に、ぼんやりと気づき始める段階。「何か不便だ」「もっとこうだったらいいのに」と感じているが、その解決策を具体的に探すまでには至っていない。
- 情報収集ステージ:課題を明確に認識し、その解決策を探し始める段階。GoogleやSNSで、関連するキーワードでの検索を積極的に行う。「〇〇 方法」「〇〇 おすすめ」といったキーワードが使われやすい。
- 比較検討ステージ:いくつかの具体的な解決策(商品やサービス)を見つけ、どれが自分にとって最適かを比較・検討している段階。「〇〇 比較」「〇〇 口コミ」「A社 B社 違い」など、より具体的なキーワードで情報を探す。価格、機能、実績、サポート体制などが評価軸となる。
- 購入決定ステージ:購入する商品やサービスをほぼ一つに絞り込み、あとは最後の後押しを待っている段階。「〇〇 購入」「〇〇 申し込み」「〇〇 クーポン」など、購入に直結するキーワードでの検索や、公式サイトの特定ページの閲覧といった行動が見られる。
- コンバージョンステージ:実際に購入や申し込みの手続きを行っている段階。申し込みフォームの入力や、決済情報の入力などがこれにあたる。この段階での離脱(カゴ落ちなど)を防ぐことが極めて重要。
これらのステージは、必ずしも直線的に進むとは限りません。比較検討の段階から、再び情報収集に戻ることもあります。しかし、この5つのステージを基本の型として持っておくことで、顧客の現在地を把握しやすくなります。
Step 4:マッピング ―「思考・感情・行動・タッチポイント」を埋める
ここからが、カスタマージャーニーマップ作成のクライマックスです。Step3で設定した各ステージを横軸に、そして「行動」「思考・感情」「タッチポイント」「課題(ボトルネック)」を縦軸に置いたマトリクス(表)を作成します。スプレッドシートやホワイトボードを使うと良いでしょう。そして、Step2で設定したペルソナが、各ステージで具体的にどのような状態にあるのかを、徹底的に書き込んでいきます。
4-4-1. 行動(Action)
ペルソナが各ステージで具体的に「何をしているか」を記述します。できる限り具体的に、動詞で書き出すのがポイントです。
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課題認知ステージの行動例:
- 同僚の愚痴を聞いて、自社の非効率さに気づく。
- SNSのタイムラインを眺めている。
- 業界のニュースサイトを読んでいる。
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情報収集ステージの行動例:
- スマートフォンで「経費精算 効率化」と検索する。
- YouTubeで「〇〇ツール 使い方」の動画を見る。
- X(旧Twitter)で評判を検索する。
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比較検討ステージの行動例:
- 競合A社、B社、C社の公式サイトを開き、料金ページをブックマークする。
- 比較サイトの記事を読む。
- 導入事例ページを熟読する。
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購入決定ステージの行動例:
- 公式サイトの「無料トライアル」ボタンをクリックする。
- 上司に導入の稟議書を提出する。
- 「〇〇社 評判」で最終確認の検索をする。
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コンバージョンステージの行動例:
- 申し込みフォームに氏名、会社名、メールアドレスを入力する。
- クレジットカード情報を入力する。
- 「送信」ボタンを押す。
4-4-2. 思考・感情(Thinking / Feeling)
各行動の裏にある、ペルソナの「頭の中」と「心の中」を言語化します。ここをどれだけリアルに描けるかが、成果を分ける鍵となります。ポジティブな感情(期待、喜び)とネガティブな感情(不安、不満、疑問)の両方を書き出すことが重要です。
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課題認知ステージの思考・感情例:
- 「このままじゃダメかもな…」(漠然とした不安)
- 「もっと楽になる方法はないのかな?」(問題意識の芽生え)
- 「面倒だけど、まだ何とかなるか」(現状維持バイアス)
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情報収集ステージの思考・感情例:
- 「こんなに解決策があるのか!」(期待、発見)
- 「専門用語が多くてよく分からない…」(混乱、ストレス)
- 「とりあえず良さそうなものをいくつかピックアップしよう」(情報整理)
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比較検討ステージの思考・感情例:
- 「A社は安いけど、機能が足りないかも…」(不安、迷い)
- 「B社の導入事例はうちと似ているな」(共感、信頼)
- 「本当にこの投資に見合う効果は出るのだろうか?」(費用対効果への疑問)
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購入決定ステージの思考・感情例:
- 「よし、これに決めよう!」(決意)
- 「でも、使いこなせなかったらどうしよう…」(導入後の不安)
- 「もっとお得なキャンペーンはないかな?」(損失回避)
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コンバージョンステージの思考・感情例:
- 「入力項目が多いな、面倒だ…」(ストレス、離脱の危機)
- 「この会社は信頼できるかな?個人情報を入力しても大丈夫か?」(セキュリティへの懸念)
- 「早く終わらせたい」(焦り)
4-4-3. タッチポイント(Touchpoint)
ペルソナが企業や商品と接点を持つ場所や媒体を具体的にリストアップします。ここが、私たち広告運用者が「どこに広告を出すべきか」を決定するための重要な情報源となります。
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オンライン:
- 検索エンジン(Google, Yahoo!)
- SNS広告(Facebook, Instagram, X, LINE, TikTok, LinkedInなど)
- ディスプレイ広告(GDN, YDAなど)
- 動画広告(YouTube, etc.)
- 比較サイト、口コミサイト
- オウンドメディア(自社ブログ)
- プレスリリース、ニュースサイト
- メルマガ
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オフライン(BtoBなどで重要):
- 展示会、セミナー
- 業界紙、専門誌
- タクシー広告、交通広告
各ステージで、ペルソナがどのタッチポイントに接触する可能性が高いかをマッピングしていきます。
4-4-4. 課題(Bottleneck)と改善機会(Opportunity)
最後に、各ステージにおいてペルソナが抱える「課題(=コンバージョンへの障壁)」と、それに対する「改善機会(=広告施策のアイデア)」を書き出します。この項目こそが、マップを具体的なアクションプランへと昇華させるためのブリッジとなります。
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例:比較検討ステージ
- 思考・感情:「本当にこの投資に見合う効果は出るのだろうか?」
- 課題(ボトルネック):費用対効果(ROI)が不明確で、投資判断に踏み切れない。
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改善機会(広告施策アイデア):
- 具体的な導入効果を数字で示した導入事例LPへ誘導するリマーケティング広告を配信する。
- 「3ヶ月で投資回収した事例も!」といったROIを訴求するクリエイティブを作成する。
- ROIをシミュレーションできるツールへの導線を広告で示す。
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例:コンバージョンステージ
- 思考・感情:「入力項目が多いな、面倒だ…」
- 課題(ボトルネック):フォームの入力負荷が高く、離脱(フォーム落ち)が発生している。
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改善機会(広告施策アイデア):
- EFO(エントリーフォーム最適化)を実施し、入力項目を最小限に絞る。
- ソーシャルログイン機能(GoogleやFacebookアカウントでのログイン)を実装し、入力を簡略化する。
- フォーム入力ページまで到達したユーザーに限定したリマーケティング広告で、「あと少しで完了です!」といったメッセージを配信する。
このように、顧客の感情の動きと、具体的な広告施策のアイデアを結びつけていくことで、カスタマージャーニーマップは単なる分析ツールから、成果を生み出す「戦略設計図」へと進化するのです。
Step 5:検証と改善 ― マップを「生きた」ツールにする
カスタマージャーニーマップは、一度作って終わりではありません。これは、あなたのビジネスを取り巻く市場や顧客の変化に合わせて、常にアップデートしていくべき「生きた」ツールです。マップに基づいて実施した広告施策の結果を、Google Analyticsなどのツールで分析し、その結果をマップにフィードバックしてください。思った通りの成果が出た施策はなぜ成功したのか、成果が出なかった施策はなぜ失敗したのか。ペルソナの仮説は正しかったか、ステージの定義は適切だったか。このPDCAサイクルを回し続けることで、マップの精度は高まり、あなたの顧客理解は深化し、広告成果は安定的に向上していくのです。定期的に(例えば3ヶ月に一度)、チームでマップを見直し、議論する機会を設けることを強く推奨します。
第3部:獲得広告への超具体的応用術 ― ジャーニーを「成果」に変える
さて、最強の設計図が完成しました。しかし、どれほど精巧な設計図も、それに基づいて実際に建物を建てなければ何の意味もありません。この第3部では、作成したカスタマージャーニーマップを、日々の獲得型広告運用に落とし込み、具体的な「成果(コンバージョン)」へと転換するための、4つの超具体的な応用術を解説します。ここからが、広告運用者の腕の見せ所です。
3-1. ジャーニー思考によるキーワード選定・構造化戦略
リスティング広告の成否を分ける最も重要な要素の一つが、キーワード選定です。カスタマージャーニーマップは、このキーワード選定に革命をもたらします。私たちはもはや、思いつきやツールが提案するキーワードを無秩序に追加する必要はありません。マップの各ステージに、ペルソナが「実際に検索するであろうキーワード」をマッピングしていくのです。
3-1-1. ステージ別キーワードのマッピング
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課題認知ステージ(刈り取り対象外だが理解は必要):
- 検索意図:漠然とした悩みや欲求。まだ解決策を探していない。
- キーワード例:「仕事 効率悪い」「残業 減らない」など。これらのキーワードで直接コンバージョンを狙うのは非効率ですが、ペルソナの初期衝動を理解する上で重要です。オウンドメディアなどでコンテンツを用意し、後のリマーケティングに繋げる布石とすることは考えられます。
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情報収集ステージ(準顕在層):
- 検索意図:課題解決のための一般的な方法や情報を探している。
- キーワード例:「経費精算 効率化 方法」「営業管理 コツ」「MAツールとは」など。比較的検索ボリュームが大きく、競合性も高いですが、将来の顧客候補にアプローチできる重要なキーワード群です。広告文では、課題への共感を示し、解決策の選択肢を提示するようなメッセージが有効です。
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比較検討ステージ(顕在層):
- 検索意図:具体的な商品やサービスを比較し、評価している。
- キーワード例:「〇〇ツール 比較」「△△サービス 口コミ」「[自社名] 料金」「[競合A社名] 評判」など。コンバージョンへの意欲が非常に高い、最も重要なキーワード群です。自社の優位性や第三者からの評価、導入事例などを訴求し、競合に対する差別化を明確に打ち出す必要があります。「競合名キーワード」への出稿も、積極的に検討すべき戦術です。
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購入決定ステージ(最顕在層):
- 検索意図:購入・申し込みの意思が固まっており、最終確認や手続きのために検索している。
- キーワード例:「[自社名] 購入」「[自社サービス名] 申し込み」「[自社名] クーポン」など。検索ボリュームは小さいですが、コンバージョン率が極めて高い、絶対に逃してはならないキーワード群です。広告予算を最優先で投下し、確実にクリックを誘い、LPへスムーズに誘導することが求められます。
3-1-2. 広告グループの構造化への応用
このステージ別のキーワード分類は、そのまま広告アカウントのキャンペーンや広告グループの構造化に活かすことができます。例えば、「情報収集キーワードグループ」「比較検討キーワードグループ」「指名キーワードグループ」のように、顧客のステージごとに広告グループを分けることで、それぞれの意図に最適化された広告文やランディングページを設定することが可能になります。これにより、広告の品質スコアが向上し、結果としてクリック単価(CPC)を抑制し、CPAを改善することに繋がるのです。もはや、キーワードを無秩序なリストとして管理する時代は終わりです。カスタマージャーニーという「意味」の軸で構造化することこそが、現代のリスティング広告運用における王道と言えるでしょう。
3.2. 顧客心理に突き刺さる、ステージ別広告クリエイティブ戦略
広告クリエイティブ(バナー画像、動画、広告文)は、顧客との最初のコミュニケーションです。カスタマージャーニーマップを使えば、各ステージの顧客の心理状態に「突き刺さる」クリエイティブを、戦略的に設計することができます。
3-2-1. 課題認知〜情報収集ステージのクリエイティブ
- 顧客心理:「何が問題なのか?」「どんな解決策があるのか?」を知りたい。
- 訴求軸:「共感」と「気づき」。顧客が抱える課題を代弁し(例:「毎月のレポート作成、まだ手作業ですか?」)、より良い未来の可能性を提示する(例:「その作業、5分で終わるかもしれません」)。
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クリエイティブの方向性:
- 画像/動画:課題を抱えている人物の困った表情や、ビフォーアフターが分かりやすく示されたイラストやマンガ。
- 広告文:疑問を投げかけるコピー(例:「〇〇にお困りではありませんか?」)、課題を自分事化させる統計データ(例:「ビジネスパーソンの8割が〇〇に悩んでいます」)が有効。クリック先のLPでは、課題解決の方法論を解説するコラムや、網羅的なガイドブック(ホワイトペーパー)を用意し、直接的な売り込みは避けるのが賢明です。
3-2-2. 比較検討ステージのクリエイティブ
- 顧客心理:「どれが一番自分に合っているのか?」「失敗したくない」という不安と期待が入り混じった状態。
- 訴求軸:「差別化」と「信頼性」。競合他社に対する優位性を明確に伝え、選ぶべき理由を論理的に提示する。
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クリエイティブの方向性:
- 画像/動画:競合との機能比較表、お客様の声(写真や動画付き)、受賞歴や第三者機関による評価を示すロゴマークなどが極めて有効。
- 広告文:具体的な数字を用いて優位性を示す(例:「導入実績No.1」「顧客満足度98%」)、社会的証明を活用する(例:「〇〇業界のトップ企業が選んだツール」)、他社にはない独自の強みを端的に訴求する(例:「唯一の〇〇機能搭載」)。
3-2-3. 購入決定ステージのクリエイティブ
- 顧客心理:「買う決心はついた。でも、あと一歩が踏み出せない」「少しでもお得に買いたい」。
- 訴求軸:「限定性」と「緊急性」。今行動すべき理由を与え、背中を強く押してあげる。
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クリエイティブの方向性:
- 画像/動画:キャンペーンの終了日時をカウントダウン表示したり、「今だけ」「限定」といった言葉を目立つように配置したりする。
- 広告文:「本日限定クーポン」「先着100名様限り」「無料トライアルは今すぐ」といった、希少性と緊急性を煽るコピーが最も効果を発揮する。不安を払拭するための「安心の全額返金保証」や「24時間サポート付き」といった文言も、最後の一押しとして機能します。
このように、顧客のステージに合わせてクリエイティブのメッセージを最適化することで、広告のクリック率(CTR)とコンバージョン率(CVR)は劇的に向上します。すべてのステージに同じクリエイティブを配信するのは、もはや悪手でしかありません。
3-3. CVRを最大化する、ステージ連動型ランディングページ(LP)戦略
せっかく最適な広告でユーザーをLPに誘導しても、そのLPがユーザーの期待に応えられなければ、即座に離脱されてしまいます。LPもまた、カスタマージャーニーのステージと連動させることで、コンバージョン率を最大化することができます。
3-3-1. メッセージの一貫性(Message Matching)
大原則は、「広告クリエイティブで約束したことと、LPの内容を一致させる」ことです。例えば、「〇〇の機能比較」という広告をクリックしたユーザーを、機能比較表がどこにもないトップページに遷移させてはいけません。必ず、広告で訴求した内容がファーストビュー(最初に表示される画面)で確認できるように設計します。この一貫性の欠如が、LP離脱の最大の原因の一つです。
3-3-2. ステージ別LPコンテンツの最適化
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情報収集ステージのユーザー向けLP:
- 目的:課題への理解を深めてもらい、自社を解決策の有力候補として認識させる。
- コンテンツ:課題の原因や背景を解説するコンテンツ、解決策の全体像、自社サービスがどのように役立つかの概要説明。導入事例よりも、まずは課題解決のノウハウを提供するようなコラム記事風のLPが有効な場合もある。コンバージョンポイントは、ハードルの低い「メルマガ登録」や「お役立ち資料ダウンロード」などが適しています。
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比較検討ステージのユーザー向けLP:
- 目的:競合に対する優位性を示し、「この商品がベストな選択だ」と確信させる。
- コンテンツ:詳細な機能一覧、料金プラン、競合他社との比較表、お客様の声・導入事例、第三者評価、よくある質問(FAQ)など、判断材料となる情報を網羅的に掲載する。信頼性を担保するための会社概要やセキュリティに関する情報も重要です。コンバージョンポイントは「詳細資料請求」「見積もり依頼」「無料トライアル」などが中心となります。
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購入決定ステージのユーザー向けLP:
- 目的:迷いや不安を払拭し、スムーズにコンバージョンさせる。
- コンテンツ:訴求内容はシンプルに絞り込み、購入ボタン(CTA)を目立たせる。限定オファーや保証制度を改めて提示し、安心感を与える。入力フォームはページ内に設置し、ページ遷移をなくす(一体型フォーム)などの工夫も有効です。余計な情報はノイズになるため、極力排除します。
理想を言えば、広告グループごとに専用のLPを用意することです。それがリソース的に難しい場合でも、LP内のコンテンツの表示順を入れ替えたり、ファーストビューのキャッチコピーを動的に変更したりするLPO(ランディングページ最適化)ツールを活用することで、メッセージの最適化は可能です。
3-4. 利益を最大化する、戦略的リマーケティングシナリオ
一度サイトを訪れたものの、コンバージョンせずに離脱してしまったユーザーに再度広告を配信する「リマーケティング(リターゲティング)」。この効果的な手法も、カスタマージャーニーマップを用いることで、その精度と効果を飛躍的に高めることができます。
3-4-1. ジャーニーに基づいたリマーケティングリストの作成
「全訪問者」といった大雑把なリストではなく、ユーザーがサイト内で「どのような行動をとったか」に基づいて、精緻なリマーケティングリストを作成します。
- 情報収集段階リスト:特定のブログ記事やコラムを読んだが、製品ページは見ていないユーザー。
- 比較検討段階リスト:製品ページや料金ページ、導入事例ページを複数回閲覧したユーザー。
- 購入直前リスト:「無料トライアル」や「購入」ボタンをクリックしたが、フォーム入力完了には至らなかったユーザー(フォーム到達ユーザー)。
- カゴ落ちリスト(ECサイト):商品をカートに入れたが、決済を完了しなかったユーザー。
これらのリストは、Google Analyticsや各種広告媒体のタグ機能を使えば、比較的容易に作成が可能です。
3-4-2. リスト別リマーケティングメッセージの最適化
作成したリストごとに、配信する広告クリエイティブとメッセージを最適化します。
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情報収集段階リスト向け:
- メッセージ:「先ほどご覧いただいた記事の関連資料はこちら」「〇〇の課題を解決するホワイトペーパーを無料進呈中」。
- 目的:より深い情報を提供し、比較検討ステージへと引き上げる。
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比較検討段階リスト向け:
- メッセージ:「〇〇(閲覧した製品)の導入事例のご紹介」「今ならわかる、競合A社との違い」「専門スタッフによる無料相談会のご案内」。
- 目的:迷いや疑問を解消し、決断を後押しする。
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購入直前・カゴ落ちリスト向け:
- メッセージ:「お手続きはあと少しで完了です」「今なら使える限定クーポンコードはこちら」「カートに入れた商品が在庫残りわずかです!」。
- 目的:緊急性や限定性を訴求し、今すぐのコンバージョンを促す。最も強力なメッセージで、短期的にアプローチする。
このように、ユーザーのステージ(≒コンバージョンへの距離)に応じて、メッセージの強弱や訴求内容をきめ細かくコントロールすることが、リマーケティングで成果を出すための絶対条件です。カスタマージャーニーマップは、この精緻なシナリオを描くための、最高の羅針盤となるのです。
第4部:【業界・目的別】獲得広告のためのカスタマージャーニー実践モデル
ここまでの理論と作成法、応用術を踏まえ、この第4部ではより具体的なイメージを掴んでいただくために、BtoCとBtoBの代表的なビジネスモデルにおけるカスタマージャーニーマップの実践例を提示します。あくまで一例ですが、自社のビジネスに置き換えて考える際の参考にしてください。
4-1. BtoCモデルケース:高価格帯・女性向けスキンケアECサイト
ここでは、30代後半の女性をターゲットにした、エイジングケアに特化した高価格帯(例:美容液 15,000円)のスキンケア商品を販売するECサイトを想定します。
- ゴール:初回限定トライアルセット(3,000円)の購入完了
-
ペルソナ:
- 名前:佐藤美咲(38歳)
- 職業:都内IT企業勤務の管理職
- 背景:仕事が忙しく、肌の手入れを怠りがち。最近、鏡を見るたびに目元の小じわや肌のハリ不足が気になるようになった。若い頃に使っていたスキンケアでは物足りなさを感じている。
- 情報収集:美容雑誌やWebメディア、Instagramで信頼できる美容家や同世代のインフルエンサーの情報を参考にすることが多い。価格よりも、成分や効果を重視する傾向がある。
- 課題:「どのエイジングケア化粧品が本当に自分に合うのか分からない」「デパートのカウンターに行く時間はない」「失敗したくない」
【ステージ別ジャーニーマップ:スキンケアEC編】
ステージ1:課題認知
- 行動:朝、鏡を見てため息をつく。同窓会で友人の肌が綺麗なのを羨ましく思う。Instagramで同世代の「#エイジングケア」投稿をぼんやり眺める。
- 思考・感情:「最近、急に老けた気がする…」「何か始めないとマズいかも」「でも何から手をつければいいの?」
- タッチポイント:雑誌、テレビ、友人との会話、SNS(Instagram, Facebook)
- 広告施策アイデア:この段階での直接アプローチは難しい。ただし、後のリマーケティングのために、美容メディアへの記事広告出稿や、インフルエンサーによるタイアップ投稿で認知の種を蒔いておくことは有効。
ステージ2:情報収集
- 行動:Googleで「30代後半 スキンケア おすすめ」「目元 小じわ 原因」と検索する。美容メディアの記事を読む。Instagramで「#エイジングケア美容液」を検索し、口コミを見る。
- 思考・感情:「レチノール?ナイアシンアミド?成分が多くてよく分からない」「有名なブランドは安心だけど、本当に効果あるのかな?」「インフルエンサーの投稿は本当?」
- タッチポイント:検索エンジン、美容系Webメディア、SNS、口コミサイト(@cosmeなど)
-
広告施策アイデア:
- リスティング広告:「30代後半 スキンケア」などのミドルキーワードで出稿。「肌の専門家が解説する〇〇の原因」といった、ノウハウ提供型のLPへ誘導。
- SNS広告:「30代の肌悩みに寄り添う」といった共感型のクリエイティブで、お役立ちコンテンツへ誘導する。
ステージ3:比較検討
- 行動:いくつかのブランド(A社、B社、自社)の公式サイトを訪れ、製品情報や価格、成分表を比較する。口コミサイトで自社製品のレビューを熟読する。好きなインフルエンサーが自社製品を紹介しているのを見つけ、興味を深める。
- 思考・感情:「自社製品は少し高いけど、成分は良さそう」「A社の口コミは賛否両論だな…」「まずは試してみたいけど、いきなり本品はハードルが高い」
- タッチポイント:公式サイト、比較サイト、口コミサイト、SNS
-
広告施策アイデア:
- リマーケティング広告:公式サイト訪問者に対し、「愛用者のリアルな声」「皮膚科学に基づいた〇〇成分の秘密」といった信頼性や効果を訴求するクリエイティブを配信。
- リスティング広告:「[自社製品名] 口コミ」「[競合製品名] 比較」といった指名・比較キーワードに、初回限定トライアルセットの存在をアピールする広告文で出稿。
ステージ4:購入決定
- 行動:公式サイトのトライアルセット購入ページを開く。購入ボタンをクリックする。
- 思考・感情:「3,000円なら試してみる価値はあるかも」「これで肌が変わるかもしれない」(期待)「でも、肌に合わなかったら無駄になるな…」(不安)
- タッチポイント:公式サイト
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広告施策アイデア:
- LPの最適化:「30日間全額返金保証」「送料無料」「いつでも解約OK」といった文言をCTAボタンの近くに配置し、購入の不安を払拭する。
- リマーケティング広告:購入ページ到達者に対し、「今なら限定ポーチプレゼント!」といった限定オファーで最後の一押しをする。
ステージ5:コンバージョン
- 行動:氏名、住所、決済情報をフォームに入力する。
- 思考・感情:「入力項目が多い…」「セキュリティは大丈夫かな?」「早く届かないかな」
- タッチポイント:購入フォーム
-
広告施策アイデア:
- EFO:Amazon PayなどのID決済を導入し、入力を簡略化。入力エラーをリアルタイムで分かりやすく表示する。
- カゴ落ちリマーケティング:フォーム入力を途中でやめたユーザーに、「お手続きの途中です。今なら〇〇特典付き!」というメールや広告を配信する。
4-2. BtoBモデルケース:中小企業向けMA(マーケティングオートメーション)ツール
ここでは、従業員50~300名規模の中小企業をターゲットにした、月額5万円~のMAツールを販売するSaaS企業を想定します。
- ゴール:無料トライアル or サービス概要資料のダウンロード完了
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ペルソナ:
- 名前:田中健太(42歳)
- 職業:製造業のマーケティング部門マネージャー
- 背景:社長から「Webからの問い合わせを増やせ」という特命を受けている。現在、施策はメルマガ配信とブログ更新のみで、効果測定も曖昧。部下は2名いるが、日々の業務に追われ、新しい施策に手が回っていない。
- 情報収集:Webマーケティング系のメディアや、競合他社の動向をチェックしている。Facebookで同業者の投稿を参考にすることもある。
- 課題:「リード(見込み客)は増えないし、既存リードへのアプローチもできていない」「何から手をつければいいか分からない」「高機能なツールは使いこなせる自信がないし、予算もない」
【ステージ別ジャーニーマップ:BtoB MAツール編】
ステージ1:課題認知
- 行動:展示会で競合他社がMAを活用している話を聞く。上司から「最近、Web経由の成果はどうなっている?」とプレッシャーをかけられる。
- 思考・感情:「うちのやり方は古いのかもしれない」「このままでは目標達成は不可能だ」「でも、MAって何だか難しそうだな…」
- タッチポイント:展示会、上司との会話、業界ニュース
- 広告施策アイデア:Facebook広告などで、「まだ、メルマガを手作業で配信していませんか?」といった課題喚起型の広告を、業種や役職でターゲティングして配信。直接のコンバージョンではなく、課題解決のヒントとなるコラム記事へ誘導する。
ステージ2:情報収集
- 行動:Googleで「MAツールとは」「リードナーチャリング 方法」と検索する。いくつかのWebメディアでMAツールの解説記事を読む。
- 思考・感情:「なるほど、見込み客を自動で育成できるのか」「自社でも導入できるかもしれない」(期待)「でも、種類が多すぎて違いが分からない」(混乱)
- タッチポイント:検索エンジン、Webメディア、オウンドメディア
-
広告施策アイデア:
- リスティング広告:「MAツール 比較」「中小企業 マーケティング 課題」といったキーワードで出稿。「初心者でも分かるMAツールの選び方」といった網羅的なガイドブック(ホワイトペーパー)のダウンロードをCTAとする。
- リマーケティング広告:解説記事を読んだユーザーに対し、その記事の内容をより深掘りしたセミナー動画やeBookをオファーする。
ステージ3:比較検討
- 行動:MAツール比較サイトを見る。主要なツール(A社、B社、自社)の公式サイトで、機能と料金を比較する。導入事例を読み、自社と近い規模の企業の成功事例を探す。
- 思考・感情:「A社は高機能だが、うちにはオーバースペックで高すぎる」「B社は安いが、サポートが不安だ」「自社は価格と機能のバランスが良いが、実績はどうなんだろう?」
- タッチポイント:公式サイト、比較サイト、導入事例記事
-
広告施策アイデア:
- リスティング広告:「[自社ツール名] 料金」「[競合ツール名] 比較」といった指名・比較キーワードへ出稿。「中小企業導入実績No.1」「手厚いサポートが自慢」など、ペルソナの不安を解消する訴求を強化。
- Facebook広告(リマーケティング):公式サイト訪問者に対し、業種別の導入事例動画や、料金体系の分かりやすい解説コンテンツを配信する。
ステージ4:購入決定(導入検討)
- 行動:社内で導入検討会議を行う。上司に提出するための比較資料を作成する。公式サイトの「無料トライアル」ボタンや「資料請求」ボタンをクリックする。
- 思考・感情:「まずは無料で試してみて、使い勝手を確かめたい」「導入効果を上司にどう説明すれば納得してもらえるだろうか?」「稟議を通すための材料が欲しい」
- タッチポイント:公式サイト、社内会議
-
広告施策アイデア:
- LPの最適化:「無料トライアルで〇〇が体験できます」「資料請求で分かることリスト」など、CTAクリック後のメリットを明確に提示。「稟議にそのまま使える!導入メリット解説資料」といったコンテンツを用意するのも非常に有効。
- リマーケティング広告:料金ページ閲覧者に対し、「今なら初期費用無料キャンペーン実施中」といったオファーで決断を促す。
ステージ5:コンバージョン
- 行動:資料請求フォームや無料トライアル申し込みフォームに、氏名、会社名、役職、連絡先などを入力する。
- 思考・感情:「入力後、すぐにしつこい営業電話がかかってこないだろうか?」(不安)「トライアルのセットアップは簡単だろうか?」
- タッチポイント:申し込みフォーム
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広告施策アイデア:
- EFO:フォームの入力項目は必要最小限に絞る。「無理な営業は一切いたしません」といった一文を添え、心理的ハードルを下げる。
- フォーム到達者リマーケティング:フォーム離脱者に対し、「ご不明点はございませんか?専門スタッフがサポートします」といった安心感を訴求する広告を配信する。
第5部:カスタマージャーニー実践における陥りがちな罠と処方箋
カスタマージャーニーマップは、正しく作成し、運用すれば絶大な効果を発揮する武器ですが、その過程ではいくつかの「罠」が存在します。ここでは、多くの企業が陥りがちな代表的なアンチパターンと、それを回避するための処方箋を提示します。あなたの努力を無駄にしないためにも、ぜひ最後までお読みください。
罠1:「作っただけ」で満足してしまう症候群
これは最も多く見られる失敗例です。チームで時間と労力をかけて美しいカスタマージャーニーマップを作成し、その完成度の高さに満足してしまい、実際の広告施策に一切反映されない。結果、マップは誰にも見られないお蔵入りの資料と化してしまいます。
【処方箋】
- 「改善機会(Opportunity)」の欄を必ず設ける:マップ作成の最終アウトプットを、分析ではなく「具体的なアクションプラン」に設定することが重要です。各ステージで見つかった課題に対し、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」という具体的なTODOリストまで落とし込みましょう。
- 定期的な見直し会議をカレンダーに登録する:作成したマップを基に実施した施策のレビューと、マップ自体のアップデートを行う会議を、例えば「毎月第1月曜日の午前中」のように定例化します。強制的にマップに触れる機会を作ることで、風化を防ぎます。
- マップを物理的に「見える化」する:可能であれば、マップを大きく印刷して、チームメンバーがいつでも見られる壁に貼り出しましょう。常に視界に入ることで、メンバーの意識に「顧客の旅」が刷り込まれていきます。
罠2:社内の「思い込み」だけで描いてしまう妄想マップ
顧客へのインタビューやデータ分析といった客観的な事実に基づかず、「顧客はきっとこうだろう」「普通はこう考えるはずだ」といった、社内の思い込みや希望的観測だけでマップを作成してしまうケースです。これでは、リアルな顧客像からかけ離れた、全く役に立たない「妄想マップ」が完成するだけです。
【処方箋】
- 「ファクトベース」を徹底する:マップの各項目を埋める際には、必ずその根拠となるデータや発言を明記するルールにしましょう。例えば、「思考・感情」の欄には「〇月〇日の顧客インタビューでの『~』という発言より」といった注釈を入れるのです。
- 顧客を巻き込む:可能であれば、ペルソナに近い優良顧客に協力してもらい、作成したマップのドラフトを見せて、「この時の気持ちは、これであっていますか?」とフィードバックをもらうのが最も確実です。リアルな顧客の声は、どんな思い込みよりも強力な羅針盤となります。
- まず「仮説」として作成する:十分なデータがない場合でも、まずは「これは現時点での我々の仮説である」と明確に位置づけた上でマップを作成し、それを検証するための広告施策やアンケートを設計するという進め方も有効です。
罠3:ペルソナが「完璧超人」になってしまう問題
ペルソナを設定する際、自社にとって都合の良いことばかりを考えてくれる「完璧な顧客像」を描いてしまうことがあります。情報リテラシーが非常に高く、自社の強みをすぐに見抜いてくれ、一切の迷いなく購入してくれる。このようなペルソナは存在しません。リアルな人間は、もっと理不尽で、感情的で、面倒くさがりなものです。
【処方箋】
- ネガティブな側面を意図的に強調する:ペルソナの「不安」「不満」「疑念」「面倒くささ」といったネガティブな感情や思考を、むしろ積極的に書き出しましょう。広告運用とは、これらのネガティブ要素をいかに解消し、乗り越えさせるか、というゲームでもあります。
- 「アンチペルソナ」を想定する:「絶対に自社の顧客にはならない人物像」を定義してみるのも一つの手です。そうすることで、ターゲットとすべきペルソナの輪郭がよりシャープになります。
- 複数のペルソナを検討する:主要な顧客セグメントが複数ある場合は、無理に一つのペルソナに統合せず、2~3パターンのペルソナを作成することを検討しましょう。ただし、最初は最も重要なペルソナ一つに絞ってマップを作成するのが定石です。
結論:カスタマージャーニーは、獲得広告の成果を最大化する「究極の顧客理解術」である
30,000字を超える長い旅にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。私たちは本記事を通じて、カスタマージャーニーが単なるマーケティングのバズワードではなく、獲得型広告という極めて実践的な領域において、具体的な成果を生み出すための強力な思考フレームワークであることを、理論から実践まで一気通貫で解説してまいりました。
もはや、勘や経験だけに頼った広告運用が通用する時代は終わりました。一方で、データやアルゴリズムだけを追いかけても、その先にいる「生身の顧客」の心をつかむことはできません。成功の鍵は、この両者を繋ぐ架け橋、すなわち「顧客の旅路を解像度高く理解し、データに基づいて的確なコミュニケーションを行う」能力にあります。
本稿で提示したカスタマージャーニーマップの作成法と応用術は、まさにその能力を開発するための、具体的かつ再現性の高いメソドロジーです。あなたが今日から取り組むべきことは明確です。
- あなたのビジネスにおける「ゴール」と「ペルソナ」を定義すること。
- ペルソナの「旅」を想像し、まずは仮説で良いのでマップを描いてみること。
- マップから得られた「改善機会」の中から、最も効果が見込めそうな施策を一つ選び、実行してみること。
最初は完璧なマップを作る必要はありません。大切なのは、顧客視点で思考する「癖」をつけ、小さなPDCAを回し始めることです。その一歩が、あなたの広告運用を根底から変え、競合が追随できない圧倒的な成果へと導く、偉大な旅の始まりとなるでしょう。
この記事が、あなたのビジネスの成功に少しでも貢献できたなら、筆者としてこれに勝る喜びはありません。さあ、今すぐ、あなたの顧客の「旅」を描き始めてください。
最終文字数:34,512文字
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