近年、動画広告の需要や配信が増加しており、YouTubeを始め各SNSで「動画広告を取り扱わない」媒体はありません。
動画広告は、静止画像の広告と違い「映像」と「音声」で商品やサービスを紹介できるので、静止画像の広告では発信しきれない情報量・楽しさを「限られた時間内」で効率よくユーザーに伝えることができます。
しかし、人気のある広告形態だからとはいえ、動画広告の採用にはいくつものハードルがあり、クリエイティブの作成・かかる費用・作成にかかる人的リソースなど、クリアしなければならない問題は山積みです。
今回の記事では、動画広告の基礎からメリット・デメリット、配信にかかる課金方式や配信可能な媒体などを詳しく解説していきます。
「動画広告の種類が知りたい」「効率よく作成する手順が知りたい」と考えているマーケティング担当者や広告運用経験の浅い人はぜひ最後まで読んでください。
動画広告とは
動画広告とは、バナー広告のような静止画像の広告と違い、動画で商品やサービスを紹介する広告形態です。YouTubeや各SNS媒体・webサイトやアプリなどで多く利用されており、各社が趣向を凝らしたものが配信されています。
近年動画広告が注目を浴びている理由は、広告自体の特徴・社会環境などが大きく影響しており、以下の要因が主な理由と考えられるでしょう。
- 静止画像やテキストのみの広告よりも、記憶に残りやすい
- 広告配信の効果検証が容易である
- スマートフォン・タブレットなどの利用者が増加している
- Wi-Fi環境・5Gなど、通信環境が向上している
特に大きな要因は、Wi-Fiや5Gなどの高速インターネット環境の拡大で「大容量の高速通信」が可能になったことです。
ユーザーは、回線の細さから起こる遅延・大容量通信による高額な通信費を気にせずインターネットを利用できるので、広告を配信する側も高画質な動画を配信しやすくなっています。
今後、動画広告の需要や配信は、より高まると予想できるでしょう。
静止画像広告と動画広告の違いは
静止画像を用いた広告と動画広告の違いは、単に「画が動く」「音が出る」だけではありません。
動画広告は静止画像では成し得ない情報量の多さに加え、広告の認知度・理解・利用意欲などの面で静止画像よりも高い効果が期待できるという調査結果が出ています。
したがって、基本的には動画広告のほうが静止画像広告よりも効率よく情報を配信できるので、利用を迷った時は「動画広告」がおすすめです。
しかし、静止画像の広告が「動画広告よりも劣る」というわけではなく、現状「静止画像広告」は無くなっていません。
すべての広告主や代理店が「動画広告を作成できる環境や技術を揃えているわけではない」のも理由のひとつですが、静止画像広告ならではのメリットや「静止画像広告だからこそ可能」なことがあるからです。
静止画像広告のメリットは、伝えたい情報を「一枚の絵」で伝えることができるため、動画広告よりも作成コストを大幅に抑えられます。
他にも、動画広告と違い「スキップされない」のも大きなメリットで、動画広告の場合は「動画を最後まで視聴しないとメッセージを伝えきれない」のに対し、静止画像広告なら一瞬で全てのメッセージを伝えることが可能です。
また、伝える情報量が少なくて済む商品やサービスを取り扱う場合は、静止画像広告のほうが高い効果を発揮します。
動画広告とテレビCMとの大きな違いは料金と目的
テレビCMは「とにかく多くの人達に見てもらいたい」場合に有効な媒体です。近年はテレビの視聴者数が減少傾向にありますが、動画広告の配信手段としては優秀なため、無くなることはないでしょう。
しかし、テレビCMを利用できるのは「一部の限られた大企業」が多いことは、多くの人が理解しています。
大きな理由は「配信にかかる費用の高さ」です。
テレビCMは配信の対象がネットの動画広告よりも多いため、認知度アップの有効な手段といえますが、配信一回にかかる費用がネットの動画広告と比較して桁違いに高額になります。
広告媒体 | 配信費用の相場 | 配信方法 |
---|---|---|
テレビCM | 1.5万円~100万円/1回 | 配信するテレビ局や配信時間を事前に 決めておき、その時間帯に見ている 視聴者を対象に配信される。 |
動画広告 | 2~30円/1再生 あらかじめ予算を決めた配信が可能 |
配信するメディア・ターゲット層を事前に決める。 ターゲットは、年齢・性別・地域・趣味・家族構成などの要素から細かく設定することができる。 |
テレビCMは「多くの人に広告を見てもらう」手段として有効ですが、費用が高額になることに加え、広告配信の効果測定が困難であるというデメリットは否定できません。
ある程度ターゲット層が決まっており、低予算で効果測定もおこないたいと考えるなら「お試し」で動画広告を配信してみてもいいでしょう。
SNS広告媒体のシェア機能を活かした配信なら、費用を抑えつつ認知拡大もワンセットでできます。
動画をランディングページに利用することもできる
動画をランディングページに利用すれば、ユーザーは商品やサービスの情報を直感的に受け取ることができるので、CVRが高まる可能性が上がります。
動画をランディングページに利用することで得られるメリットは以下の5点です。
- 静止画像広告よりも伝達できる情報量は増大する
- ユーザーがページに滞在する時間が長くなる(離脱されにくい)
- テキストによる単調な情報伝達を減らせる
- 訴求力が高い
- CVRが向上する可能性がある
埋め込む動画の本数は1〜2本に限定し、ページの読み込み時間を3秒以内にすることを心がけましょう。
読み込みに時間がかかってしまうと、直帰率や離脱率が上がる恐れがあるため、むやみに複数の動画を埋め込むことは避けてください。
動画で広告を作成・配信する意味と目的は
今や動画広告は「商品やサービスの紹介」や「企業の認知度アップ」に欠かせない存在です。
静止画像広告よりもインパクトが強く、ユーザーの印象に残りやすいので、多くの企業がこぞって出稿・配信しています。
しかし、単に「ウケがいいから」や「周りもやっているから」などの理由で動画広告に手を出すのは得策ではありません。広告である以上、制作や配信には予算が必要であり、決して安い金額ではないので、作成・配信するには何かしらの目的を決めることが必要です。
以下で動画広告を作成・配信する意味と目的について、詳しく解説していきます。
商品やサービスの認知度をアップさせる
動画広告で最初におこなうことは、商品やサービスの認知度を上げることです。
いくら優れた商品を取り扱っていても、その商品が世に知られなければ「ない」ものと同じなので、まずは視聴者の興味を惹く動画を作成して「商品を知ってもらう」ことに専念しましょう。
インパクトのある映像や音声を利用して視聴者を集めるのもいいですが、インフルエンサーや有名人を起用した動画を作成することで、一定数のファンを集めることも可能です。
起用した有名人やインフルエンサーに実際の商品を使ってもらい、使用感や感想を発信・拡散してもらう「インプレ動画」などもYouTubeでは人気があります。
動画を広告に利用することで、商品やサービスの認知度をアップさせることが可能です。
ブランディング
動画で紹介する商品やサービスが「ある程度の認知があるもの」である場合、ブランディングを目的に動画広告を配信してもいいでしょう。
ブランディングが目的の場合は、その商品やサービスのイメージをユーザーが想像しやすい動画にして配信することが重要になります。イメージしやすい形で伝えることができれば、その商品やサービスに対する不信感や嫌悪感を持たれにくくなるでしょう。
ブランディングを目的とした動画広告では、「信頼・安心」を得ることに注力してください。
紹介する商品やサービスに対する「企業のコンセプト」などを、熱いメッセージで力強く伝えるのも効果的な方法のひとつです。
販売促進
動画広告配信の目的が「売上促進」なら、商品やサービスの特徴やメリット・実際に使った感想などをダイレクトに伝えることが重要になります。
ユーザーは、「抽象的」で「取って付けた」ような「きれいごと」ばかりの言葉よりも、デメリットも含めたリアルな声が聞きたいのです。そのため、ありのままのリアルな声をもとに動画を制作することは、信頼感を高める効果があります。
実際に使用した人のリアルな声から制作した動画は、視聴者に商品やサービスに対する安心感や購買意欲を高めるのに効果的です。
CPAを改善する
動画広告は、CPAを下げる(改善する)効果もあります。
これまでの話では、動画広告は認知度を上げるのが主な目的である…と説明しましたが、コンバージョン獲得やリード獲得・webサイトへのトラフィック増加などの効果もあり「動画広告は認知拡大のみ」というイメージは払拭したほうがいいでしょう。
上のグラフは、英語圏のマーケターから取った「Video Marketing Statistics 2020」という動画広告のアンケート結果を示したものです。
動画広告の効果で、売上が上がったと回答した人は80%、リード獲得に繋がったのは83%、トラフィック増加は87%にものぼります。
動画広告は認知度アップだけでなく、広告のクリック率やコンバージョン率を上げ、CPAを下げる効果が期待できそうです。
動画広告の種類
動画広告には、表示方法や形式の違いにより多くの種類があります。
動画広告と聞いて最初に思いつくのはYouTubeでしょう。YouTubeは視聴者数も多く、数多くの動画広告を配信可能なので、多くの企業が趣向を凝らした広告を見ることができます。
- インストリーム広告
- アウトストリーム広告
さまざまな種類がありますが、大きく分けて上記の「2種類の形態」があり、さらに細かく種類があるので、ひとつずつ詳しく解説していきます。
インストリーム広告
インストリーム広告とは、視聴している動画と同じ画面上に配信される動画広告で、YouTubeで動画を視聴している時に「途中」や「再生前後」で強制的に表示される広告をイメージするとわかりやすいでしょう。
画像引用:https://www.youtube.com/watch?v=B1S9A45pdCI
この広告形態では、動画の再生途中や前後で広告が流れる仕様になっており、動画広告が再生されるタイミングによって以下の3種類に分けることができます。
- プレロール広告…動画が再生される前に流れる動画広告
- ミッドロール広告…動画の再生途中に流れる動画広告
- ポストロール広告…動画終了時に流れる動画広告
YouTubeの動画をイメージするとわかりやすいですが、インストリーム広告は「今から視聴しようとしている動画コンテンツ」と同じ画面に広告が表示されるため、動画広告で紹介している商品やサービスの魅力を大きな画面で伝えられるというメリットがあります。
画面の片隅でしか表示できない広告と違い、大画面で商品やサービスを伝えられるので、視聴者の購買意欲を刺激する効果は高いでしょう。
インストリーム広告について、以下の表にメリット・デメリットを簡単にまとめました。
分類 | 動画広告の種類 | 配信される場所 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
インストリーム広告 | プレロール広告 | 動画の前 | ほぼ必ず目に入る | ・せっかちなユーザーは嫌悪感を感じる ・スキップされる可能性もある |
ミッドロール広告 | 動画の途中 | ・TVCMと同感覚のため、許容度は高め ・コンテンツの続きを見たいがため、離脱されにくい |
・大多数のユーザーは邪魔だと感じている ・スキップされる可能性が高め |
|
ポストロール広告 | 動画の最後 | 動画コンテンツを邪魔することなく配信される | ・よほど興味がある広告でなければ、高確率でスキップされる |
インストリーム広告にはさらに種類があり、広告を途中でスキップできる「スキッパブル広告」と、強制的に最後まで視聴させられる「ノンスキッパブル広告」の2種類があります。
スキッパブル広告とは
YouTubeなどで、動画の再生途中や前後で再生される動画広告のことです。広告が再生してから5秒経過した後なら、スキップが可能です。
画像引用:https://www.youtube.com/watch?v=B1S9A45pdCI
ユーザーが30秒以上動画広告を視聴、または30秒経過する前に広告のURLをクリックした場合に限り、広告配信の費用が発生します。
上記の条件を満たさなければ費用が発生しないため、余計な費用が発生しにくいというのが大きなメリットです。そのため、ターゲットに対して効率的なリーチが可能になれば「費用対効果の高い広告形態」として活用できます。
YouTubeを運営するGoogleが推奨する動画の尺は、スキッパブル広告だと12秒以上〜3分以下です。
ノンスキッパブル広告とは
ノンスキッパブル広告はスキッパブル広告と同様に、視聴する動画の途中や前後に再生される広告で、広告途中でのスキップができない広告形態になります。
画像引用:https://www.youtube.com/watch?v=67f5NKrR-G8
こちらの広告形態は、スキップができないため「最後まで広告が視聴される」ことを前提に費用が発生する方式で、「1000回広告表示」で料金が発生する形態です。
スキップ不可で、強制的にでも広告を視聴してもらえるため、認知度アップに大きな効果があります。
動画の尺は15秒以下、クリエイティブによってはイメージダウンのリスクはありますが、フリークエンシーキャップ(1人のユーザーに対して表示回数の制限を付ける)の設定を上手く利用することで回避できるでしょう。
アウトストリーム広告
インストリーム広告は「動画の中(視聴している動画と同じ画面の枠内)」で配信されているもので、アウトストリーム広告はその逆「動画の外」で配信される広告です。
わかりやすく言えば、アウトストリーム広告は「webサイトやSNS・アプリの広告枠で配信される広告」のことで、広告を配信可能な枠があれば場所を問わず配信できるので、配信先の制限がありません。
アウトストリーム広告は少し長めの動画広告でもスキップされずに視聴してもらえる傾向があるため、多くの企業が「少しでも長く見てもらい、自社の魅力をアピールしよう」と考え、利用が高まっています。
アウトストリーム広告には、配信のタイミングによって3つの形態があるので、用途に応じて活用するのがベストです。
- インリード広告
- インバナー広告
- インターステイシャル広告
以下でこの3種類について、詳しく解説していきます。
インリード広告
インリード広告とは、Twitter(X)やFacebookなどのSNSで利用されている広告形態で、画面をスクロールしている時にコンテンツの間に表示される動画広告です。
インリード広告は、画面に表示されているコンテンツをスクロールしている最中に「表示された」時点で動画が再生されるので、ユーザーに「これちょっと面白そう」と思われると最後まで見てもらえる可能性が高いのがメリットになります。
他にも、後述するインバナー広告よりも「表示される枠が大きい」ため、視認性が高く広告で紹介している商品やサービスの特徴や利点などを効率よくアピールすることが可能です。
ストーリー性のある動画広告を配信すれば、それを視聴したユーザーに「これは続きが気になる」と思われ、最後まで視聴してもらえる可能性が高まります。
インバナー広告
インバナー広告は、画面に表示されているコンテンツの「バナー広告枠内」に表示できる動画広告の形態です。
デスクトップ版Yahoo!のトップページ右上にある広告をイメージするとわかりやすいでしょう。
コンテンツを視聴しているか否かを問わず「自動的に再生」されるので、インパクトのあるクリエイティブなら「メインのコンテンツそっちのけで視聴してもらえる」「最後まで閲覧してもらえる」などのメリットがあります。
最近では、インストリーム広告やインリード広告のほうが利用の数は高まっており、他の動画広告の形態と比較して市場規模はそれほど大きくありません。
しかし、YouTube以外でも動画広告の配信が可能な形態なので、静止画像のみのバナー広告よりも多くの情報や魅力をアピール可能なため、なくなることはないでしょう。
インターステイシャル広告
インターステイシャル広告は、別名「スプラッシュページ」とも呼ばれ、ページ移動時にページとページの間に「独立しているページ」として表示される広告です。
「コンテンツを読む」や「このページをスキップする」などのリンクが画面上に表示されており、そのリンクをクリックして目的のページに移動する…という仕組みになっています。
また、一定時間が経つと自動的に次ページに移動するのも、この広告の特徴です。
ニュースサイトを閲覧中に、目的の記事ページに移動しようとするタイミングで表示させる…といった使われ方が多くなっています。
Googleでは、インターステイシャル広告を「UX(ユーザーエクスペリエンス)上問題のある仕組み」と判断しているため、マイナス評価をしていることが多いです。
動画広告を配信するメリット
動画広告には静止画像の広告ではできないことが多くあり、今やオンライン上の広告形態として「なくてはならない」ものの地位を獲得しています。
そのため、動画広告の市場規模は年々拡大の傾向にあり、SNSなどで動画広告を見ない日はありません。
動画広告配信の効果は大きく、具体的には以下の3種類のメリットが考えられます。
- 動画と音声で視覚・聴覚に情報を伝えることができる
- 認知度アップやブランディングの効果が高い
- 広告配信の効果検証が容易である
これらのメリットについて、詳しく解説していきますので、動画広告の配信を検討している方は参考にしてください。
動画と音声で視覚・聴覚に情報を伝えることができる
動画広告は、静止画像広告やテキストを使用した広告と違い「伝達できる情報量」が多いため、従来の広告では伝えるのが難しかった「商品やサービスの具体的な使用感」を伝えられます。
動画によって視覚・聴覚から「商品やサービス」をイメージしやすく、動画のクリエイティブ次第で質感やブランドストーリーを大胆に表現することが可能です。インパクトの強い動画を作成すれば、それを視聴したユーザーの記憶にも残りやすいでしょう。
動きや音声を利用して、短時間でも多くの情報を伝えられるのは「動画広告」ならではの強みといえます。
認知度アップやブランディングの効果が高い
静止画像の広告と比較して、動画広告は「認知度アップ」や「ブランディング」の効果が高いのも大きなメリットです。
動画を利用すれば、広告配信している商品やサービスを体験した時の感覚や、商品開発に至るまでの「ストーリー」などを伝えやすいので、自社ブランドの好感度アップに繋げることも可能でしょう。
- スマートフォンやタブレットなどの動画が閲覧できるデバイスの普及
- 動画広告を出稿できるSNS広告媒体・SNS利用者数の増加
- 5GやWi-Fiなどのインターネット通信環境の高速化や拡大
- 大容量高速通信の低価格化
上記の要因も重なり、動画広告視聴に対する環境的なハードルが低くなったことも「動画の普及」に大きく影響しています。
これらの理由から、動画広告は視聴されやすくなっており、認知拡大・ブランディングの効果が高いといえるでしょう。
広告配信の効果検証が容易である
広告配信には、配信に見合うだけの「効果」が重要です。広告主にとって、その効果を知るための効果検証は欠かせないものになります。
インターネットで配信する動画広告なら、テレビCMと違い「広告配信に関する情報」の入手や把握が容易です。
動画広告配信の効果測定では、主に以下のような指標を用いて効果を検証します。
- 動画再生回数または視聴された回数
- 動画広告が再生された時間
- インプレッション数(動画が表示された回数)
- 動画が最後まで再生された確率
- クリックされた回数
- コンバージョンに至った確率
費用をかけて広告を配信した以上、配信で得られたユーザーの行動を定量的に測定し、情報を把握しておくのは重要なことで、インターネットを利用した動画広告なら簡単にデータを得ることが可能です。
ターゲットに関するデータが容易に得られるため、PDCAサイクルを回しやすいのもメリットになります。
動画広告配信に関するデメリット
動画広告のクリエイティブ作成や効率的な運用をしていくうえで、デメリットとなる要素についても知っておくべきでしょう。
デメリットを知ることで、動画広告に携わる時に「この方法ではダメでは?」「これでは後々の運用に悪影響がでるのでは?」などの先読みができるようになるため、主なデメリットについては最低限把握しておいてください。
- 動画広告の制作にコストがかかる
- 動画の制作に時間がかかる
- 動画のクオリティによっては嫌悪感・不快感を与えてしまう可能性がある
上記の主なデメリットについて、以下で詳しく解説していきます。
動画広告の制作にコストがかかる
動画制作は、テレビドラマやアニメと同様に「完成までに多くの工程」が必要です。
- どんな広告でどんな商品やサービスを紹介するかの「企画」
- 実写やアニメーションの制作・撮影
- 画面のエフェクトや効果音・セリフの挿入
- キャプションの挿入など
工程数の多さは、そのままコストの高さに直結するため、静止画像の広告と比較して高額になることが多々あります。
そのため、出演するキャストの出演料や制作スタッフの人件費はもちろんのこと、動画制作の知識や技術のない会社では、制作を依頼するための外注費も必要です。
動画の制作に時間がかかる
上記の人的リソースや制作費に加えて、動画の制作には時間的コストもかかります。
一般的に静止画像よりも動画のほうが制作にかかる時間は多く必要です。
そのうえ、自社に動画制作のスキルがない・乏しい場合は「試行錯誤」も必要なため、時間的コストはさらに大きくなります。
一部のSNS広告媒体では、動画広告を簡単に作成できるツールが提供されていることもあり、動画広告制作のハードルはかなり下がったとはいえますが、まだまだ静止画像広告の制作よりも時間がかかるのが現状です。
動画のクオリティによっては嫌悪感・不快感を与えてしまう可能性がある
動画広告は、配信時のターゲティングでミスをした場合、嫌悪感や不快感をユーザーに与えてしまう可能性があります。
特にコンバージョン目的で配信している広告は「商品やサービスを購買してもらおう」とする「押し売り感」が強くなってしまう傾向があり、それを視聴するユーザーによってはストレスを与えてしまう結果になりかねません。
その結果、ユーザーから嫌悪感・不信感を抱かれ「自社ブランドに対する悪印象」や「悪いイメージの拡散」に繋がる危険性があります。
動画広告を制作・配信する時は、詳細なターゲット設定・適切なクリエイティブを制作することが重要です。
動画広告の料金や主な課金形式
静止画像の広告出稿・配信と同様に、動画広告の出稿・配信にも「掲載費用」などのコストが必要で、課金方式によってかかる費用が変わってきます。
動画広告の場合は、主な課金方式は以下の3種類です。
- CPV課金方式
- CPM課金方式
- CPC課金方式
以下で詳しく解説していくので、課金方式選択の参考にしてください。
CPV課金方式
CPV(Cost Per View)課金方式は、多くの広告媒体で採用されている「最も一般的な課金方式」で、広告の再生回数に応じて費用がかかる形式です。
動画広告が一定時間視聴されたのを単位としてカウントされる仕組みで、配信するプラットフォームによって多少の違いはありますが、カウントの基準は「3秒」「5秒」「最後まで視聴」などの種類があります。
動画広告が「最後まで視聴」でカウントされる場合は、別名「CPCV(Cost Per Completed View)課金方式」と呼ばれ、尺の短い動画広告などで選択してみるといいかもしれません。
CPM課金方式
CPM(Cost Per Mille)課金方式は、広告が表示された回数(インプレッション数)に対して広告掲載料金がかかる形式です。
1000回動画広告が表示されるごとに、課金されます。
ユーザーからのクリック率が高いほどクリック単価は低くなり、質の高い広告に利用すれば費用対効果が高くなるので、広告主に人気のある課金方式です。
CPC課金方式
CPC(Cost Per Click)課金方式は、配信している広告のリンク先Webページがクリックされた回数に応じて料金が発生する方式です。
上記のCPM課金方式と比較して、同じ表示回数の場合はクリック単価が高くなってしまいます。
こちらの課金方式は、サイト遷移数がわかりやすくデータを取りやすいので、配信している広告の「効果測定」に重きを置いている場合によく利用される課金方式です。
動画広告を配信できる主な媒体
動画広告とひとことで言っても、出稿・配信する広告媒体によって特徴や利用可能なフォーマットが違ってきます。
配信する広告のターゲットとなるユーザーや、配信目的に合致した媒体を選択することは、配信の成果を左右する重要な要素のひとつです。
主な広告媒体は、以下の9種類になります。
- YouTube
- LINE
- TikTok
- Twitter(X)
- アプリ動画広告
- Google動画広告
- Yahoo!動画広告
ここから上記の広告媒体について、詳しく解説していきますので、参考にしてください。
YouTube
YouTubeは、誰もが知っている「動画配信サイト最大の利用者数」のオンライン動画共有プラットフォームです。アクティブユーザー数は2022年1月時点で25億6200万人に達しており、ソーシャルメディアとしては世界第2位のWebサイトになります。
驚異的なリーチ数・幅広い年齢層のユーザーに利用されているのが、YouTubeの動画共有サイトとしての強みです。
サイトの性質上、他のSNSと比較してアクセス数・動画再生回数が多いのもYouTubeならではの強み。長時間利用されることが多いので「動画広告に接する」機会が他の広告媒体と比較して圧倒的に高く、成果達成に期待をかけている広告主は少なくありません。
動画を視聴する前後・再生途中に広告が入るので、配信している広告が自然と視聴者の目に入るのは、広告主にとっては大きなメリットです。
YouTubeに動画広告を出稿・配信する場合、インストリーム動画が利用できます。
動画専門のサイトなだけあって「配信可能な広告メニュー」も豊富です。YouTubeでは大きく分けて以下の5種類のメニューが利用できます。
- True Viewインストリーム広告
- True Viewディスカバリー広告
- バンパー広告
- アウトストリーム広告
- マストヘッド広告
これらのメニューについて、詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
なお、アウトストリーム広告については当記事前半にて解説済みなので省略いたします。
True Viewインストリーム広告
TrueViewインストリーム広告とは、YouTubeなどの動画配信サイトの動画枠内で配信される広告のことで、動画を視聴しようとしている「全ユーザーの目に入る」という特徴から認知度拡大に適したマーケティング施策の一種だと言えるでしょう。
インストリーム広告には、「プレロール広告」「ミッドロール広告」「ポストロール広告」の3つの広告挿入箇所を選択できます。
さらに、インストリーム広告にはスキップ可能なものと、スキップ不可の動画広告の2種類がありますが、スキップ不可のものは「強制的にでも視聴してもらえる」という利点がありますが、多用し過ぎるとマイナスイメージを与えることもあるので、注意しましょう。
True Viewディスカバリー広告
True Viewディスカバリー広告とは、YouTubeで動画再生中に動画枠の右側に表示される「関連動画」や、検索一覧に表示される広告のことです。
True Viewディスカバリー広告は、サイトの中では動画は配信されません。表示されている広告をクリックすることで初めて再生される形態の広告になります。
ユーザー自身がクリックしないと動画が再生されないという性質から、少なくとも「広告の内容に興味関心を持っている可能性がある」ユーザーからのアクションであるため、不快感や嫌悪感といったネガティブな印象を与えにくいでしょう。
- YouTube検索結果
- YouTubeの関連動画
- モバイル版YouTubeのトップページ
具体的には、上記の場所でディスカバリー広告が配信されます。
バンパー広告
バンパー広告とは、6秒間の「スキップできない」広告のことで、動画本編視聴中に再生され「最後まで視聴してもらえる動画広告」なので、主に認知度の向上やリーチ拡大などの目的で利用されています。
Googleからは「動画広告の俳句」と呼ばれており、動画の尺が6秒と短くユーザーへのストレスも少ないのが特徴です。
バンパー広告と同様に「スキップできない動画広告」の形態として「ノンスキッパブル広告」がありますが、両者の違いは「6秒という動画の尺」で、ノンスキッパブル広告の場合は15秒・30秒の尺があります。
スキップできない長尺の動画はユーザーに想定以上の負担をかけ、ユーザビリティ低下の危険性があるため、6秒という短尺の広告形態の提供を開始しました。
バンパー広告はユーザーの不快感が少なく、短尺でユーザーが広告に集中できるといったメリットがあります。
マストヘッド広告
マストヘッド広告は、YouTubeのサイトの最上部に掲載される動画広告のことで、トップページの一番目立つ場所で広告が配信されます。
基本的な広告形態は「動画広告のみ」で、パソコンで視聴している場合は自動で再生が始まり、最大30秒間の動画広告が再生される形態です。
マストヘッド広告の配信は、Googleの営業担当者を通じてのみ利用が可能で、配信予約も担当者を介しておこなう必要があります。
動画広告配信エリアの設定は「国単位」での選択のため、リーチ数はかなり大きいです。
課金方式は「CPM課金」で、配信期間は1日から最大7日間まで掲載・配信できます。
マストヘッド広告の配信は少々ハードルが高めですが、以下のようなメリットがあるため、手間を上回るだけの見返りが見込めるなら検討してもいいでしょう。
- ユーザーの広告想起に繋がりやすい
- 多くのユーザーにアプローチができる
- スマートテレビとの相性は高い
Facebookは、現在多くのユーザーが登録・利用している「実名」が基本のSNSです。
Facebookにも動画広告を配信できるフォーマットが揃っており、配信可能な種類は以下の3種類になります。
- フィード広告
- ストーリーズ広告
- インストリーム広告
Facebook同様に配信できる媒体として、同じ会社が運営しているInstagramやMessengerの他にもAudience Networkと呼ばれる外部アプリやWebサイトにも動画広告を配信することが可能です。
Facebookはターゲティング精度が高く、年齢・性別・地域・興味関心や行動データなどのオーディエンス設定ができるので、自社が展開している商品やサービスに合ったユーザーを効率的に抽出して広告を配信できます。
Instagramは写真などの画像投稿がメインのSNSで、若年層ユーザーが多く「トレンドを重視」したものが好まれています。
Instagramでは、Facebookのページと連携した広告配信が可能で、同様の広告配信のロジックを持っているので上記のFacebookと同じメリットがあるでしょう。
Instagramで配信できる場所は以下になります。
- フィード広告
- ストーリーズ広告
Instagramではストーリーズ広告の利用率が高く、国内のInstagramアクティブユーザー数の約7割です。
ストーリーズ広告を利用すれば、多くのユーザーにリーチすることも可能で、フィード広告と比較してCPMが低くなるというメリットがあります。
単価を抑えてユーザーにリーチしたいと考えているなら、Instagramのストーリーズ広告はおすすめです。
LINE
LINEも多くのユーザーが利用しているSNSで、対話型のチャットアプリになります。
広告配信時の圧倒的なリーチが可能なため、「LINEのみ活用している」広告主は少なくありません。
LINEで配信可能な動画広告の種類は多くあり、主な場所は以下になります。
- Smart Channel
- LINE NEWS
- LINEマンガ
- LINE BLOG
- LINEポイント
- LINEショッピング
- LINEチラシ
- LINEクーポン
- タイムライン
- ウォレット
上記の中から、自社の商材やサービスに合ったものを選択して広告を配信できるので、ユーザー属性を考慮して配信するようにしましょう。
TikTok
TikTokは、若年層が全ユーザー数の半数近くを占めているユーザー参加型動画共有SNSです。
動画を積極的に視聴したいと考えるユーザーが多いため「動画広告」も視聴されやすく、縦長のショート動画などは近年需要が高まっています。
動画一本あたりの尺が短いため、ちょっとした「時間潰し」として気軽に視聴できるのが大きなメリットで、おすすめ欄に表示される動画はユーザーの興味関心に近いものが多いため視聴されやすいです。
TikTokの動画広告の種類は以下の3種類。
- 起動画面広告…アプリ起動時に表示される動画広告
- インフィード広告…通常の投稿(コンテンツ)の間に表示される動画広告
- ハッシュタグチャレンジ広告…ハッシュタグを利用して動画の投稿を促進させる
自社商品やサービスの性質、広告配信の目的に合致したものを選択してください。
Twitter(X)
Twitter(X)は、全世界での利用者数が3億人オーバーの匿名登録制SNSです。
日本国内でも数多くのユーザーがアカウントを作成しており、毎日数え切れないほどのユーザーが呟いている(ツイートしている)SNSになります。現在はツイートが「ポスト」に変更されていますが、意味は同じです。
Twitter動画広告の特徴として…、
- リポスト(旧リツイート)の活用で、情報の拡散がしやすい
- 詳細なターゲティングが可能
- 若年層をターゲットにアプローチできる
などの強みがあり、特にリポストは「費用を抑えた情報の拡散」ができるため、多くの企業がTwitterで動画広告を出稿・配信しています。
Twitter(X)で配信できる動画広告は、以下の5種類です。
- プロモビデオ
- Amplifyスポンサーシップ
- プロモライブビデオ
- ファーストビュー
- インストリーム動画広告
アプリ動画広告
アプリ動画広告とは、アプリの中でいろいろな形で配信されている動画広告のことで、動画広告を視聴することで「アプリ内のサービス」を無料で体験できるようになるので、動画広告を最後まで視聴してもらえるのが強みです。
アプリ動画広告は、以下のような「金銭を支払う代わりに広告を視聴する」タイプのサービスで配信されています。
- マンガアプリ
- ゲームアプリ
- キュレーションアプリ
- ポイント獲得アプリ
動画広告が再生されるタイミングは、画面が切り替わる時やポイントをゲットする時など、アプリによって違いがあり、半ば強制的に「動画を最後まで視聴させる」ことができるため、悪く言えば「程々のクオリティ」でも問題ありません。
しかし、粗悪な動画広告を配信してしまうと、ネガティブなイメージをユーザーに植え付けてしまう危険性があるため、避けたほうが無難でしょう。
アプリ動画広告で使われる代表的な広告形態は、以下の4種類です。
- アウトストリーム動画広告
- インターステイシャル動画広告
- リワード動画広告
- インタラクティブ動画広告
Google動画広告
Google動画広告とは、Googleが提携しているサイトの広告枠を利用して配信するアウトストリーム広告のひとつです。
Googleで動画広告を出稿・配信するためには、GDN(Googleディスプレイネットワーク)という200万以上のサイトやモバイルアプリ・動画コンテンツに広告を配信することができる「アドネットワーク」というものを使用します。
これを利用することで、全インターネットユーザーの90%に広告を配信することが可能です。
Google動画広告を利用すれば、以下のような恩恵が得られます。
- 幅広いジャンルのサイトに動画広告が配信できる
- ユーザー属性とサイトコンテンツでターゲティングができる
- 潜在層の顧客にもアプローチができる
Yahoo!動画広告
Yahoo!動画広告は、YDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)とYahoo!プレミアム広告の「アウトストリーム動画広告」と「インストリーム動画広告」の3種類で配信できます。
【YDN】
Yahoo!が提携するアドネットワークのことです。主な掲載場所は…、
- スマートフォンアプリ「Yahoo! JAPAN」のタイムライン
- Yahoo! JAPANのWebサイト
- Yahoo!ニュース
- クックパッド
…などのパートナーサイトが有名です。
【Yahoo!プレミアム広告】
Yahoo!プレミアム広告は、Yahoo! JAPANトップページのアウトストリーム広告と、動画コンテンツに挿入する形で広告が再生されるインストリーム広告の2種類があります。
アウトストリーム広告は、ページ両サイドの「トップインパクトパノラマ」と呼ばれるコンテンツがない部分を利用して配信されたり、トップページ右上のスペースである「トップインパクトスクエア」などに配信されたりする広告です。
インストリーム広告が配信できるのは、Yahoo!ニュースアプリ(iOS)や、GYAO!(パソコン・タブレット・アプリ)で映像を視聴している時です。
Google動画広告とYahoo!動画広告の違いは?
ここまで動画広告を配信できる媒体について解説してきましたが、極端な話「Google動画広告とYahoo!動画広告さえ使えば、現在ネット上にある「大部分のWebサイト」に動画広告を配信することができます。
では、Google動画広告とYahoo!動画広告との違いは何でしょうか?
両者の大きな違いは、配信先とターゲティング方法です。
配信先 | 独自のターゲティング方法 | |
---|---|---|
Google動画広告 | 全世界の200万以上の提携サイトや モバイルアプリ |
コンテンツターゲティング …商品やサービスに関連したキーワード設定により、関連コンテンツやサイトに自動配信される |
Yahoo!動画広告 | ・日本国内の提携サイト ・Yahoo!ニュース ・Yahoo! JAPANトップページ |
サーチターゲティング …設定しているキーワードを過去に検索したユーザーを対象に、広告が表示される |
上の表にわかりやすくまとめてみました。
Googleのコンテンツターゲティングでは、例として「スノーボード」でキーワードを登録した場合、スノーボードに関する内容を掲載しているサイトを対象にして、スノーボードに関連する広告が配信されます。
逆に、YDNのサーチターゲティングの場合は、「スノーボード」でキーワード登録した時、過去に「スノーボード」というキーワードでターゲティングしたユーザーを対象に広告を配信する…といった感じです。
したがって、Google動画広告は「幅広いユーザー向け」、Yahoo!動画広告は「購買意欲の高いユーザー向け」の広告だといえます。
動画広告を作るための手順を紹介
費用をかけて動画広告を作成する以上、きちんとした手順を踏んで作成しないと、目的もストーリーもまとまっていない「単に絵が動いている広告のようなもの」になってしまいます。
そのため、動画広告作成の目的・動画の構成・撮影などの流れを計画し、流れを決めて制作に取り掛かることが大切です。
基本的には、以下のフローに合わせて作成するのがセオリーとなっています。
STEP1の「必要事項の整理整頓」と「情報の取捨選択」では、動画制作に必要な情報を集め、整理整頓したのちに「この情報は必要か否か」を取捨選択してまとめます。
STEP2の「メッセージを考案する」と「メッセージは複数決めておく」では、動画広告を利用して伝えたいメッセージを考えてください。メッセージがひとつだと、訴求力に乏しい動画になってしまう可能性があるので、メッセージは複数決めておきます。
STEP3では「動画の構成を作成」しましょう。思いつきのままに動画を作成すると「前後のまとまり」がない「ストーリーが破綻した」動画になってしまう可能性があるので、必ず「構成」は作成してください。
STEP4では「PDCAサイクル」を回して、問題があった点の改善・検証を繰り返し、動画の完成度を高めていきます。
STEP5で「効率のよい効果測定」を考えましょう。後述する「KPI設定に使用する指標」を目的に応じて決めてください。
例えば、動画広告配信の目的が「コンバージョン獲得」の場合は、配信した動画広告がコンバージョン獲得にどのくらい影響を及ぼしたのかを知ることで、次の広告配信に活かすことができます。
コンバージョン獲得の影響を知るための指標は、クリック数やお問い合わせ数・会員登録数・売上などの指標で、これらの数値から推測することが可能です。
動画広告でスキップされないためのポイント
動画広告を作成して出稿・配信しても、スキップされてしまうとユーザーに情報を伝えることができません。
ユーザーに「自社の商品やサービス」を知ってもらい、認知拡大やお問い合わせ・コンバージョンに繋げるには、ユーザーを惹きつけるものを制作する必要があります。
やみくもに広告を配信しても、見当違いのユーザーにばかり配信していては成果も上がらず広告費だけが浪費されるので、ターゲットを絞った配信をすることが大切です。
ここからは「スキップされないための動画広告作成」のポイントを紹介していきます。
動画広告を出稿・配信する目的を明確にする
費用をかけて動画広告を作成・出稿・配信する以上、目的を明確にすることはとても重要です。
「動画広告で何がしたいのか?」が不明瞭だと、広告を通じて伝えたい情報も伝わらず意味のないものになってしまう可能性もあります。
- 自社ブランドの認知度アップを目的にする
- ユーザーに自社商品やサービスの購買意欲を促進させる
- 効率的なコンバージョン獲得
広告を出稿する時は、少なくとも上記のような目的を決めておくことが大切です。
上記の全てが目的でもいいでしょう。欲張らずに「どれかひとつ」でも構いません。
重要なのは、動画広告を出稿・配信する目的を明確にすることです。
目的に合わせた「型」を意識してみる
動画広告には、目的やペルソナに応じた「型」があります。
どのような動画広告を作ればいいのか迷っている時は、型に当てはめた構成で動画広告を作成するとうまくいくかもしれません。
代表的な型は以下の3種類です。
【問題点を解決させるタイプの動画】
動画の冒頭で、ユーザーが抱えている問題点や悩みを提示して、動画の中で「問題解決のための手段や方法」を見せるタイプの動画になります。
認知度が低い新商品などを紹介する時に効果的で、その商品を使用することで「ユーザーが抱えている問題が解決する」のをイメージしやすい動画にすれば、ユーザーからのアクションが期待できるでしょう。
【ターゲットの幅が広い商材を扱うタイプの動画】
商品の紹介・メリットの訴求を、ストーリーのように順序たてて動画を作成する手法です。
商品に興味関心を持つユーザーに対して、この商品を入手することで得られるメリットなどを伝えることができます。
注意点としては、ある程度「認知度のある」商品でないと効果が薄いということです。
商品やサービスの魅力をより詳しく伝えられるというメリットがあるため、アパレル業界やECサイトに向いており、幅広いユーザー層をターゲットにした商品やサービスの紹介に利用することをおすすめします。
【ユーザーにアクションを促すタイプの動画】
イベントやキャンペーンなどをシンプルかつストレートに伝える手法です。
動画の「インパクト」については、さほど気にする必要はありません。動画で紹介する情報そのものがインパクトを持っているため、ストレートに伝えるだけでユーザーの気を惹くことができます。
紹介するイベントやキャンペーンそのものに「ガツンとくるインパクト」があるなら、こちらのタイプで動画を作ってみてもいいでしょう。
目的に合わせてターゲット設定をおこなう
動画広告を作成する目的が決まったら、目的に合わせたターゲット設定をおこないます。
ターゲットの興味関心と自社が伝えたい内容が一致するようにクリエイティブを作成すれば、動画の最後まで視聴してもらえる動画広告の作成が可能です。
ここでユーザーが「求めていること」と、自社が「訴求したいこと」とのミスマッチが生じてしまえば、動画は最後まで視聴されず「スキップ」または「離脱」に繋がるおそれがあります。
まずは、ターゲットを「過去に自社サイトに訪れたことのあるユーザー」に絞ることで、より精度の高いターゲット設定が可能になるでしょう。
ターゲットにふさわしい広告媒体を決める
ある程度ターゲット層が絞り込めたら、どの広告媒体を利用して出稿・配信するかを決めます。
ターゲットが若年層の場合は、比較的若い世代がよく利用している広告媒体で配信することで、効率的な配信が可能です。
逆に、ターゲットが「シニア層」なのに、若い世代が集まる広告媒体で広告を配信した場合は、思ったほどの効果や成果が得られない可能性があります。
ターゲットにふさわしい広告媒体を選択して出稿・配信をおこないましょう。
定期的な効果測定をおこない、PDCAサイクルを回す
目的に沿った適切な広告媒体で広告を配信したら、今後のデータ蓄積のために効果測定をおこないます。
広告を配信して、効果が得られたら「ハイ、そこで終了」というわけにはいきません。得られたデータからPDCAサイクルを回し、改善に努めていくことが大切です。
動画広告はトレンドの流れや移り変わりが想像以上に早く、先日バズっていた動画が今は落ち目…なんていうことは珍しくありません。
したがって、動画広告で成果を上げていく・継続させていくには、運用しながらPDCAを回し、よりよいものを制作していくことが重要です。
最初の5秒でユーザーの興味を掴む
現在、出回っている動画広告の多くは「スキップ可能」になっており、ユーザーが「興味がない」と感じた広告は無理に視聴しなくてもいい仕様になっています。
これは、メインのコンテンツからの離脱をある程度防ぐため仕方がないことなのですが、考えの浅い広告主はストーリーや見た目のインパクトばかりにこだわり、失敗する場合が少なくありません。
スキップされない動画広告を作成したいなら、まずは「最初の5秒」にこだわりましょう。
最初の5秒で、ターゲットユーザーに刺さるインパクトやストーリーを詰め込めば、それだけでスキップされる確率は格段に下がります。
それに加えて、ユーザーが広告の商品やサービスを購入して得られるベネフィットを明確にして動画に織り込むことができれば、動画に込めたインパクトやストーリの効果はさらに大きくなるでしょう。
動画の「見た目の派手さ」よりも、最初の5秒でユーザーの興味を掴むことが大切です。
動画広告の効果を測定するおすすめの方法
せっかく手間と費用をかけて動画広告を作成して出稿・配信するからには、広告を配信した時の効果がどれほどなのかを知ることは重要です。
動画広告の効果測定は、KPIを設定することで、可能になります。
動画広告の効果測定方法には、以下で解説するKPI設定がおすすめです。
自社の認知度拡大が目的の場合のKPI設定
認知度拡大を目的とした効果測定なら、以下の指標のいずれかを設定するのがいいでしょう。
- 再生回数
- 表示回数またはインプレッション数
- 視聴者の数
- ブランド認知度
- 広告想起率
これらの指標を用いることで、認知拡大の可否を数字による判断で可能になります。
弾き出された数値がどのように変化しているかを分析し、現状の把握・改善に繋げていきましょう。
購買意欲促進を目的としたKPI設定
購買意欲促進を目的とした場合、以下の指標のいずれかに設定してください。
- 視聴完了率
- 平均再生時間
- 購入意向率
- ブランド好意度
これらの指標を測定することで、動画広告による購買意欲促進の結果が得られたかを数値で確認できます。
コンバージョン獲得が目的のKPI設定
コンバージョン獲得を目的とした場合、以下の指標のいずれかに設定するのがおすすめです。
- クリック数
- お問い合わせ数
- 会員登録数
- 売上
これらの指標の数値を調べることで、コンバージョン獲得が動画広告の影響をどのくらい受けて結果が得られたのかが、数値によって確認できます。
動画広告の主な成功事例を紹介
ここからは、動画広告を出稿・配信して得られた成功事例を紹介していきます。
参考になるものがあれば、じっくり読んで自社の動画広告作成に役立ててください。
YouTube動画広告 VISAタッチ決済
画像引用:https://www.youtube.com/watch?v=FPtDovu4g-0
YouTubeで配信されている動画広告「VISAのタッチ決済 タッチの差」は、混雑しがちな会計で「これを利用することでスムーズに会計が進む」ことをアピールしています。
レジが混雑する大きな原因は、財布から代金を取り出して支払う時に「小銭を数えながら出す」行為です。
クレジットカードを利用したタッチ決済なら、いちいち金額を計算しながら代金を取り出す手間がありません。しかも、暗証番号の入力の手間もないので、暗証番号忘れによるトラブルも回避できます。
クレジットカードのタッチ決済によるメリットを、効果的に見せている動画広告です。
Instagram動画広告 GROOVE X 株式会社
GROOVE X 株式会社では、人と寄り添う「家族型ロボット」の開発をしています。
ロボットの可愛らしい動きや生き物らしさは、静止画僧よりも動画のほうが伝わりやすいです。実際に社内外でも「静止画よりも動画のほうがいい」という意見が多数上がっていたようです。
動画広告を利用して広告を配信した結果、エンゲージメント数が従来の2倍にアップしたという結果になりました。
GROOVE X 株式会社ではInstagramだけでなく、LINEを組み合わせてロボットの魅力を配信しています。
Facebook動画広告 BMW
Facebookでは、フィード広告やストーリーズ広告・インストリーム広告など、多くの広告フォーマットがあるのが強みです。
ドイツを本拠点とする自動車メーカー「BMW」は、Facebookの柔軟なターゲティング設定と広告キャンペーンを利用して「ブランド動画」とダイレクトレスポンスを目的とした動画の2つを施策として進めています。
動画視聴から何らかのアクションを起こしたユーザーをリターゲティングするという2段階の施策でプラス20%のセールス効果を出しました。
TikTok動画広告 マクドナルド ハッシュタグチャレンジ
TikTokのハッシュタグチャレンジを活用して成功した事例に、マクドナルドのハッシュタグチャレンジがあります。
マクドナルドでは、デジタルネイティブ世代をターゲットにした「ワンコインで購入できる」お得なセットメニューの認知度アップや来店促進を目的としたハッシュタグチャレンジが過去に実施されました。
「#ティロリチューン」はマクドナルドのポテトが揚がった時に出る音に合わせたキーワードです。誰でも簡単に真似できるダンスをしながら500円のバリューセットを食べる様子を撮影するチャレンジ企画です。
有名なインフルエンサーをプロモーションに起用し、インフィード広告からチャレンジページに誘導可能な構成にされています。
動画広告配信の結果、3/4から3/26までの23日間でトータル再生数1億回・5万件のユーザー動画投稿数を叩き出しました。
Twitter(X)動画広告 ミールキット「キットオイシックス」
オイシックス・ラ・大地株式会社がTwitter(X)で配信している「KitOisix(キットオイシックス)」のプロモーション動画です。
画像引用:https://www.youtube.com/watch?v=5I5dHIx3F-w&t=7s
Twitterでのユーザー層を意識して、広告感のないセールス色をおさえたストーリー構成で、実際に「キットオイシックス」を利用している家庭のシーンを動画に起用しています。
実際に利用しているところを動画にすることで、商品の特徴やメリットを簡潔に伝えることができており、動画を活かしたプロモーションになっているのがポイントです。
出演者も有名なインフルエンサーではなく、実際の利用者を起用することで親近感を醸し出しています。
まとめ
昨今の高速インターネット通信の普及で、今後も動画広告はさらに需要が高まるでしょう。
動画広告は静止画像の広告と比較して、多くの情報を発信できるので、動画にストーリー性を持たせたり、静止画では成し得ないインパクトを効果的に見せたりすることが可能です。
テレビCMと違い「効果検証」もしやすく、得られたデータを今後の活動に役立てることもできます。
動画広告は、一度作ってしまえばそれで終わり…というわけではありません。
効果検証からPDCAを回し、さらによいものを制作して出稿・配信していくことが大切なので、日々改善に努めていきましょう。
本記事が、御社の動画広告制作の一助になれば幸いです。
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